日産・新型フェアレディZ登場 (3) 「新型フェアレディZ プロトタイプ」から読み取れるもの

2020年9月17日 16:27

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新型フェアレディZプロトタイプ(画像: 日産自動車の発表資料より)

新型フェアレディZプロトタイプ(画像: 日産自動車の発表資料より)[写真拡大]

 2020年9月16日、「新型フェアレディZ プロトタイプ」のデザインが公開された。予告されていた「外観」だけの公開だった。現在までに分かっている諸元は、エンジンはスカイライン400RのV型6気筒3.0Lツインターボエンジンの405psで、確実視されている。多少のチューニングの差はあるものと考えられる。シンクロレブコントロール付MT(手動ギア)であることに注目だ。

【前回は】日産・新型フェアレディZ登場 (2) 「ポルシェシンクロのミッション」とアメリカンGT

 エクステリアのボンネットフードだが、初代S30は、直列6気筒であることを象徴するように真ん中が一列に盛り上がっていた。それが、新型フェアレディZ プロトタイプでは、ボンネットフードが少し幅広くV6の形状を表すように広がっている。つまり、チューニングの違い、或いはパワーユニットの違う仕様があることは当然に予想できる。

 他のデザイン的特徴は、インテリアに見られたのが、ダッシュボード上部の左ハンドル車では右側にある3連メーターである。これは、初代S30のとき、特徴的に取り付けられていた3連メーターをモチーフにしているようだ。インテリア全体のバランスとしては良いようには見えなかったが、かつてのS30オーナーとしては懐かしい思いで見ていた。しかし、現代風に液晶画面をもっと大型化し、すっきりさせても良かったかもしれない。

 なんといっても注目は、6速マニュアルトランスミッション(MT)だ。シンクロレブコントロール付6速のようだ。また、おそらくスカイラインGT400Rに搭載されているAT仕様が併売されるであろう。いまやMTでは、加速タイムすら自動ミッションに対抗できないことが分かり切っているからだ。MT仕様は、ごく少数のマニア向けと見るほうが良いであろう。

 シンクロレブコントロール付とはいかなるものであるかだ。シフトダウンのとき、エンジン回転数と走行側ギアの回転数が噛み合わないとギア鳴りを起こしてしまうし、歯が欠ける心配もある。その回転数を合わせるためダブルクラッチを行って、シフトダウンするのがレーシングテクニックだった。それを電子制御で自動的に合わせるのが、シンクロレブコントロールだ。さらにシフトアップのときも合わせるので、これがあればギクシャクした操作にならない。

 ATやDCTのほうがシフトチェンジは速いことは既に知られたことだが、高回転型エンジンの性能を引き出すテクニックがもてはやされてきた時代では、ダブルクラッチやヒール&トゥのブレーキとアクセルの同時コントロールも合わせて、ドライバーのコーナリングテクニックとなっていた。これは昔のことで、速く走るには必要のないテクニックとなっている。だが「趣味」としては、ゲームよりもはるかに面白いかもしれない。

 さて、「新型フェアレディZ プロトタイプ」で見せる日産の狙いは、シンボリックカーによって日産のイメージを一新して拡販を図ることに決まっている。このような動きがこの10年足りなかったことは確かで、特に日本市場を無視していたのと同等の状態だった。そこで、今回の発表は歓迎すべきだが、またしても短期的目先の動作で終わってしまう懸念を感じてしまった。

 「ニッサンインテリジェントファクトリー」発表の折、社長が記者会見しなかった。それには、こうした「造り方の合理化」を経営陣が軽視してきたことが感じられる。一方、トヨタは「造り方のカイゼン」を日常的に全力で行っている。河合満元副社長を遇してきた狙いはそこにある。またトヨタ学園など、「職人芸を保存する動き」、「ウーブンシティ構想」など長期ビジョンを持って動いているのが目に付く。

 日産は、グローバル経営と称して、目先の投資感覚で経営をしてきているのが目立つ。コロナ禍の状況でも決定的差をトヨタから見せつけられている以上、日産も「クルマメーカーのビジネスモデル」をよく理解して、新時代に向けて抜本的改革を進めてほしいものだ。

 『企業経営は投資ではない』。

■2020年9月16日現在分かっている、新型フェアレディZ主要諸元

 エンジン: V型6気筒3.0Lツインターボエンジン
 トランスミッション:6速MT
 全長:4382mm
 全幅:1850mm
 全高:1310mm
 ホイール/タイヤ寸法:フロント255/40R19、リア285/35R19(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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