次世代リチウムイオン電池正極材料の劣化メカニズム、原子レベルで解明 東大

2020年9月10日 07:49

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今回の研究の概要。(画像: 東京大学の発表資料より)

今回の研究の概要。(画像: 東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 リチウムイオン電池はモバイル機器や電気自動車などへの大きな社会的需要があり、さらなる高容量化および長寿命化が求められている。中でもポイントとなっているのが正極材料であり、世界各国で新たな開発が進められている。その中の1つ、次世代の高容量正極材料として知られる「リチウム過剰系」正極は、劣化が激しいことが課題として挙げられているが、東京大学は9日、その劣化メカニズムを原子レベルで解明したと発表した。

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 リチウム過剰系正極材料は、充放電サイクルに伴って容量が低下するだけでなく、電圧も大きく下がることが実用化への大きな課題である。だがその劣化メカニズムは、これまで分かっておらず重要な因子も明らかにされてこなかった。そのため、実用レベルの材料を開発するための糸口が見えていない状況であった。

 そこで東京大学の研究グループは、リチウム過剰系材料の単結晶を作製し、原子レベルでの観察を実施。化学溶液を用いて材料が段階的な充放電を行っている状態を模し、その断面を走査透過型電子顕微鏡(STEM)の観察サンプル用に準備した。

 その結果、材料の中でリチウムイオンが脱離し充電状態にある領域では、正極中の酸素が分解して放出されていることが判明。それに伴い材料の結晶構造が膨張し、結晶内のマンガンとリチウムが原子レベルで混合し、結晶の乱れが生じることも見出された。

 この構造変化は充放電に伴い必然的に生じるものであるため、原子レベルでの新たな材料設計の指針が必要となる。例えば、酸素の結合性が高い他の金属をマンガンと置換することで、酸素放出が起きにくく劣化を最小限に抑えられる可能性がある。

 このような新たな構造制御の視点は、リチウムイオン電池の材料設計において大きな飛躍に必要不可欠なものである。したがって、現在のリチウムイオン電池の性能では不可能なアプリケーションへの応用も広がることが期待される。

 本研究の成果は8日付の「Nature Communications」誌オンライン版にて掲載されている。

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