人工骨に骨粗しょう症薬を組み合わせた骨移植法を開発 東北大

2020年9月3日 12:07

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OCPcolとテリパラチドと組み合わせた骨移植法と、市販人工骨とテリパラチドを組み合わせた骨移植法を比較したレントゲン写真(東北大学の発表より)

OCPcolとテリパラチドと組み合わせた骨移植法と、市販人工骨とテリパラチドを組み合わせた骨移植法を比較したレントゲン写真(東北大学の発表より)[写真拡大]

 東北大学大学院医工学研究科のグループは8月31日、ヒトへの移植を目的とした生体材料(人工骨)を人体に埋める際、骨粗しょう症治療薬を添加することで、骨欠損を飛躍的に修復させる技術を開発したと発表した。自家骨移植や、人工骨単独の治療法に代わり、広く普及するか期待がかかる。

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 事故や感染症、骨粗しょう症、骨肉腫の除去などによって生じる骨欠損は、現代の整形外科技術では治療が困難とされる。そのため、骨欠損の一般的な治療法として、骨移植が導入されている。

 骨移植の手法は、患者の健康な部位の骨を使う「自家骨移植」と、人工骨を埋め込んで骨組織を作る「人工骨移植」の2つに分類されるが、いずれも課題がある。腰などから骨を採取する自家骨移植は、患者の負担が大きく、人工骨移植は骨と完全に同化せず、体内に長期間残るために人体への悪影響が懸念されている。

 こうした中、東北大の鎌倉慎治教授らのグループは、骨密度や骨強度の増加を促す骨粗しょう薬を使い、課題解決に取り組むことにした。業界内では、移植後の炎症を抑え、免疫応答を高める人工骨など、新たな生体材料の開発を目指す動きがあるが、薬理を用いた技術開発は世界的にも珍しいと見られる。

 実験研究では、同大が産学官連携事業の一環で開発した人工骨「OCPcol」に、国内外で広く使われる骨粗しょう薬「テリパラチド」を添加し、骨修復効果があるかを検討した。経過観察したところ、テリパラチドを染み込ませたOCPcolを埋入させた部位は、埋没後3カ月後に不透明な組織が張り始め、6カ月後には骨再生を実現した。

 生体材料と骨粗しょう症薬を併用して骨欠損を治す試みは過去に何度も行われてきたが、骨再生の成功は今回が初めて。歯科・口腔外科領域の骨欠損に有効なOCPolの骨再生能の高さを証明する形となった。

 歯科領域を除く骨移植の件数は、国内で8万件以上に上る。このうち、過半数の移植手術が、自家骨移植で占めるとされる。

 そんな中登場した、OCPolとテリパラチドを併用した骨移植技術。患者への負担が少ないだけでなく、テリパリチドの使用は埋入時のみで、利便性が高い。様々な医療現場に応用され、骨移植の技術底上げに繋がりそうだ。(記事:小村海・記事一覧を見る

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