ニプロに注がれる「中計」と「アビガン」動向

2020年8月7日 07:08

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 使い捨て医療機器大手のニプロは1954年、「医療器具用硝子管」「魔法瓶用硝子」の製造企業として設立された。そして現在の収益の3本柱は「医療機器事業」「医薬品(後発医薬品も含み、製剤・治験薬・原薬の受託)製造事業(国内首位)」「ファーマパッケージ(医療用硝子成形品)事業」。

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 とりわけ評価が高いのが医療機器分野。「人工透析関連」では澁谷工業からOEM供給の機器本体に独自の人工腎臓・チューブを一体化して販売。「補助人工心臓・肺」と並んで高いシェアを誇っている。

 またこの事業分野は幅広い。例えば、高齢者にとり合併症という懸念から注意が必要な「糖尿病」の検査機器などもその1つ。筆者は糖尿病羅漢者。毎月の血液検査でその数値の推移を確認しているが、単に血糖値検査だけであればメディセーフフィットというニプロの製品で測定が容易。専用の針で指先をチクリと刺し、少量の血液に機器の先端部を当てることで瞬時に測定ができる。

 ニプロの着実な収益動向は、付加価値の高い人工透析関連機器の米国の拡大・アジアでの伸長が牽引役となっている。今3月期計画は「6.2%の増収(4700億円)、0.3%の営業増益(265億円)、4.6%の最終増益(245億円)」。四季報は来期についても「6%の増収、6%の営業増益、10%の最終増益」と独自予想を示している。

 アナリストは「直近ではバングラディシュで高シェアの医療機器企業を子会社化した。現時点で56カ国に179の販売拠点を有している。伸びが期待できる新興成長国向けの体制整備が進んでいる」と、今後に向けた「海外市場」深耕の動きを評価している。

 佐野嘉彦社長も「海外市場拡充」を方針として公にしている。具体的には米・仏の子会社で医療用ガラス生地管の生産設備を増強といった策が今期、進められている。それぞれ21年・22年に稼働が予定されている。

 そんなニプロが今期を初年度に至25年3月期までの中期5カ年計画に踏み出した。「売上高1兆円大台」を目標にした計画の軸は、海外部門の拡充。年度平均増収率7.0%超の内訳は「海外8%・国内5%」超。平均営業利益率を7%超としている。

 兜町の住人の間からは、こんな声が聞かれる。「これまでにも中計目標は着実に実行してきた。その意味で売上1兆円台移行は歓迎すべき材料。が、それ以上に興味を覚えるのは『効果あるや、なしや』の決定打が出ていない、新型コロナウイルス治療薬アビガンの存在。生産を受託した。今年9月から生産が始まる。効果云々の出方次第でかっこうの株価材料になろう」。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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