反物質が存在しない理由は? 対称性の破れの増幅現象に迫る世界初の実験結果 東工大ら

2020年7月24日 17:48

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実験に使用された偏極装置(写真:東京工業大学の発表資料より)

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 宇宙を構成する物質(バリオン)。これに相当する存在として反物質が挙げられるが、宇宙にはほとんど存在しないことが謎とされている。この謎を説明する仮説として、CP対称性の破れが提唱されているが、確認されていない。東京工業大学、名古屋大学、日本原子力研究開発機構の研究者らから構成されるグループは、CP対称性の破れに迫るP対称性の破れの増幅現象を検証するための実験を実施している。

【こちらも】なぜこの世界は物質でできているの? 重力波から物質の起源を検証 東大の研究

■反物質が宇宙にほとんど存在しない謎

 我々の世界を構成する最小単位が素粒子だ。素粒子には粒子と、電荷だけがまったく逆の性質をもつ反粒子が存在し、2つがぶつかり合うと消滅する。ビッグバンが起きたとき、同じ分量の粒子と反粒子が誕生したはずだが、宇宙には現在粒子からなる物質しか存在せず、対応する反物質はほとんど存在しない。

 反物質が消えてしまう条件のひとつとして、CP対称性の破れが提唱されている。粒子と反粒子を置き換え、鏡映しにした世界で同じ現象が同じ確率で起きるとするCP対称性が破れることは、粒子と反粒子の振る舞いが異なることを意味する。だがCP対称性の破れを表す現象はまだ発見されていないという。

■P対称性の破れの増幅現象で明かされる宇宙創成の謎

 一方で、鏡映しの世界で同じ現象が同じ確率で起きる「P対称性」は、素粒子原子核反応で知られている。陽子や中性子といった核子同士に働くP対称性の破れの100万倍程度の現象は、実験的に確認されている。研究グループは、P対称性の破れが増幅するメカニズムを明らかにすることで、CP対称性の破れの謎を解明しようと試みた。

 研究グループが注目したのが、原子量が139であるランタンの安定同位体だ。この安定同位体の原子核は中性子を吸収すると、P対称性の破れが確認されている。そこで研究グループは偏極させた中性子をランタンの同位体に照射し、放出されるガンマ線の方向の分布を測定した。その結果、方向の分布に偏りがあり、偏りが中性子を構成するスピンの向きによって変化することを世界で初めて発見した。

 今回えられた実験結果により、P対称性の破れが増幅されるモデルの検証が可能になるという。今後は、CP対称性の破れが増幅されるメカニズムが解明され、反物質がほとんど存在しない謎に迫ることが期待される。

 研究の詳細は、米物理学会誌Physical Review Cのオンライン版にて6月25日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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