20倍の効率でタンパク質合成する人工mRNA開発 医薬品への応用期待 名大ら

2020年7月9日 10:58

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研究の概要(画像: 名古屋大学の報道発表資料より)

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 名古屋大学と科学技術振興機構は7日、mRNAの一部を酸素原子から硫黄原子に置き換えることによって、タンパク質の合成効率が20倍以上にもなる人工mRNAの開発に成功したと発表した。研究グループによれば、新たなタンパク質合成法や、これまではmRNAによるタンパク質の合成効率が不十分だったために開発が進まなかったmRNA医薬品への応用が期待されるという。

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■mRNA医薬品とは?

 mRNA医薬品とは、私達の体内でタンパク質の合成に関わっているmRNA(メッセンジャーRNA)を使った医薬品をいう。例えば、特定のタンパク質の不足が病気の原因ならば、体内にmRNAを注入し、特定のタンパク質を合成させることで、病気の治療に役立てることができる。

 このようなmRNA医薬品は、現在、次世代医薬品として世界中で研究・開発が進められている。その代表例が新型コロナウイルスワクチンだ。

 これまでのワクチンは、鶏卵等を使って増やした後に無毒化または弱毒化したウイルス等を私達の体内に注入し、免疫反応を起こして、免疫を獲得させるものだった。

 これに対してmRNAワクチンは、化学的に合成したmRNAを体内に注入し、このmRNAがつくるタンパク質に対して免疫反応を起こさせ、免疫を獲得させるものだ。そのため、安全性が高く、開発が容易で、低コストで生産できる。

 現在、新型コロナウイルスワクチンとして開発が先行しているのは、このmRNAワクチンである。例えば、アメリカのモデルナ社は、7月中にも「mRNA-1273」の第3相治験を開始する予定であると発表している。

 しかし、このようなmRNA医薬品にはいくつか問題点もある。その1つがmRNAによるタンパク質の合成効率が医薬品として利用するには不十分であるという点だ。今回の研究成果は、このような問題点を解決するものである。

■PS修飾でmRNAのタンパク質合成効率が20倍以上に

 mRNAは、リン酸基、糖部、塩基の3つの部分からなるが、研究グループは、このうちのリン酸基にある酸素原子を硫黄原子に置き換えたmRNAを人工的に合成した。このような構成原子の置き換えをPS修飾という。

 そして、このPS修飾が施された人工mRNAについてタンパク質の合成効率を調べたところ、タンパク質の合成開始に関係する領域にPS修飾を施した人工mRNAについて、最大で約22倍のタンパク質の合成効率向上が確認された。

 研究グループによれば、PS修飾により人工mRNAのタンパク質合成効率が向上する理由は、PS修飾によって、最も時間がかかるタンパク質の合成開始段階が加速されることによるものだという。

 研究グループでは、本研究成果は、新しいタンパク質の合成方法開発に加え、新型コロナウイルスのワクチン療法や、タンパク質補充療法等に使われるmRNA医薬品への応用が期待されるという。また今後、人工mRNAの分子設計の指針になるうるものであるとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

関連キーワード名古屋大学科学技術振興機構新型コロナウイルス

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