ダイヤモンドよりも強靭な炭素結晶が存在か 筑波大が「ペンタダイヤモンド」と命名

2020年7月4日 08:30

印刷

ダイヤモンドよりも軽く高い強靭性をもつペンタダイヤモンドの結晶構造(写真:筑波大の発表資料より)

ダイヤモンドよりも軽く高い強靭性をもつペンタダイヤモンドの結晶構造(写真:筑波大の発表資料より)[写真拡大]

 極めて高い硬度をもつ炭素結晶「ダイヤモンド」。筑波大学は6月30日、ダイヤモンドよりも軽く、強靭な新しい炭素結晶の存在を予言し、ペンタダイヤモンドと命名したと発表した。

【こちらも】「相転移」の利用で三次電池が高電圧化、IoT社会の電源へ 筑波大の研究

■多様な形態をもつ炭素結晶

 複数の炭素原子が結合した炭素結晶は、黒鉛やダイヤモンドなど異なる構造を有している。これは、炭素の結合の仕組みが多様性をもつためだ。これまでにも、フラーレンやカーボンナノチューブ等、異なる構造をもつ炭素結晶が実験によって合成されており、これらは形状により違う物性をもつ。ある変形に対しダイヤモンドよりも高い弾性率をもつ炭素結晶も判明しているが、あらゆる面で高い弾性率をもつ炭素結晶の存在はほとんど知られていなかった。

■ダイヤモンドよりも軽くて強靭なペンタダイヤモンド

 筑波大学の研究グループは、幾何学的な考察により高い弾性率をもつ炭素結晶の存在を調べた。その結果、炭素原子から構成される五角形の辺をすべて共有させた炭素結晶が存在しうることを予言した。このペンタダイヤモンドは、ダイヤモンドの約6割の質量密度しかないほど軽いという。

 研究グループは、量子力学に基づいてペンタダイヤモンドの物性を調べた結果、安定した炭素結晶であることが判明。ペンタダイヤモンドの弾性率を解析したところ、ダイヤモンドの8割の硬さ(体積弾性率)をもつことが明らかになった。またヤング率がダイヤモンドの1.3倍であるなど、伸ばしたりねじったりする変形に対し強靭性をもつことも判明した。

 研究グループによると、ペンタダイヤモンドの存在の予言は新しい炭素結晶の可能性を見出しているという。ダイヤモンドよりも軽く高い強靭性をもつペンタダイヤモンドは、耐衝撃材料への応用が期待されるとしている。

 研究の詳細は、米物理学誌Physical Review Lettersに6月30日付でオンライン掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事