暑さ和らげる遺伝子を解明 唐辛子が暑さを和らげる理由は 京都工芸繊維大

2020年6月4日 06:52

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 ヒトは恒温動物であるため体温を一定に保つ仕組みを有しており、そのおかげでほぼ全地球にわたる生息範囲を手に入れた。しかし、体温を一定に保つメカニズムはいまだに解明されていない。京都工芸繊維大学の研究グループは3日、脳内の特定の遺伝子が暑さを和らげることを発見したと発表した。

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 こまでの研究では、Transient receptor potential(TRP)ファミリーと呼ばれるタンパク質が体温制御に関与することが示唆されてきた。そこで研究グループは、その一種であるTRPV1に着目し、暑熱環境下におけるその役割を調査した。

 実験は、TRPV1遺伝子の無いノックアウトマウスを用いて行われた。その結果、TRPV1遺伝子の無いノックアウトマウスは暑熱環境下において異常な体温上昇が観察された。これは、暑熱環境下においてTRPV1遺伝子が体温制御をする上で重要な役割を有していることを示すものである。

 また研究グループは、唐辛子に含まれる辛み成分が体温低下に関係があることも2019年に発表している。唐辛子に含まれる辛み成分であるカプサイシンは、TRPV1活性化物質であり、脳に作用することで体温を低下させる機能がある。カイサプシンは脳のTRPV1放熱神経回路をオンにするのだ。

 一般に、熱帯域や亜熱帯域では唐辛子を含む食品が好まれる傾向がある。この傾向と、カイサプシンが有する体温低下機能との間には何らかの関係があると考えられる。

 近年では、地球温暖化の影響により体温がオーバーシュートし熱中症になるケースが増えている。したがって、唐辛子のように外部からTRPファミリーを含む食品を摂取することで、そのような健康被害を減らすことも可能である。

 また、今回発見されたTRPV1以外にも、体温制御に関わる遺伝子は多数存在すると考えられる。例えば体温低下を抑制する遺伝子を発見することで、冷え性や代謝の低下を防ぐことが可能となる。ヒトの体温制御の秘密を明らかにすることによって、高齢化社会の到来で求められる医療への負担軽減にもつながることが期待される。

 本研究の成果は5月29日付の「Scientific Reports」誌オンライン版にて掲載されている。

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