銀河に潜む大宇宙の驚異の規則性 カンザス州立大学の研究

2020年6月2日 18:25

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銀河のスピン方向の分布を示す全天マップ。宇宙を見る方向によって、渦の方向には大きく分けて4つの領域で規則性が存在することを、このマップの4極の色の分布が示している。(c) カンザス州立大学

銀河のスピン方向の分布を示す全天マップ。宇宙を見る方向によって、渦の方向には大きく分けて4つの領域で規則性が存在することを、このマップの4極の色の分布が示している。(c) カンザス州立大学[写真拡大]

 私たちの宇宙は、どの方向を見ても巨視的には同じような性質が存在していると従来は考えられてきた。だが、これはそもそも人類の勝手な思い込みであって、宇宙の創造主は私たちが想像もつかないような驚異の規則性を、この宇宙が誕生する際に仕込んでいたらしいことが、6月1日にカンザス州立大学の研究者たちによって第236回アメリカ天文学会で発表された。

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 銀河はほとんどの場合、渦巻き構造を持つ。大宇宙に無数に存在している銀河を1つ1つ調べてゆくと、渦巻きの向きには信じられないような規則性が存在しているのだそうだ。と言っても、銀河の渦巻きの向きを特定することは難しい。なぜならば、右回りに見える渦巻き銀河も地球から見るのとは反対方向から見ると(すなわちその銀河を裏側から見ると)、左回りに見えるため、右回りなのか左回りなのかは特定ができないからだ。

 この事実は裏を返せば、もしも私たちの宇宙がどの方向を見ても巨視的には同じような性質が存在しているのであれば、渦巻き銀河の渦の向きは宇宙全体で見れば、右回りに見えるものと、左回りに見えるものが、半々に存在するはずである。だが、カンザス州立大学で20万個以上の渦巻き銀河について渦の向きをしらみつぶしに解析したところ、予想だにしなかった局所的な規則性が存在していることが判明したのだ。

 膨大な解析を可能にしたのは、データサイエンスと呼ばれるカテゴリーの観測技術である。つまり、宇宙の全方向で巨大望遠鏡によって撮影された画像を、コンピュータを駆使して全自動で片っ端から調べていくという手法が確立されたため、人為的なミスのない膨大なデータの解析が可能になったのである。

 宇宙全体にある渦巻き銀河の渦の向きに存在する規則性は、時間的、空間的な相関性を持ち、初期の宇宙が回転をしていたことを示唆するものであると、研究者たちは主張している。このことをわかりやすく表現すると、私たちが観測する宇宙の方角によって、様々な時代の渦巻き銀河が観測できるという。その渦の向きは時代時代によって、地球から見て右回りに見えるモノが多い領域と、左回りに見えるモノが多い領域とが存在し、それを時系列的、あるいは空間のつながりで見ていくと、明らかな規則性が見いだせるということである。

 ビッグバンと言えば、1点からあらゆる方向に宇宙空間が爆発的に創造され広がっていったイメージを思い浮かべてしまうため、宇宙はどの方向を見ても巨視的には一様であるという先入観を勝手に思い描いてしまいがちだが、実は宇宙空間全体が渦を巻きながら成長していったらしいのだ。1つ1つの銀河が渦を巻いているのと同じように、大宇宙は時空の中を大きな渦を巻きながらフラクタルな世界を展開しているのかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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