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マツダ、ホンダ、日産、生き残れるのか? (13) 「減算資金・増産資金」極限は「信頼」で
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■「減算資金・増産資金」の極限は「信頼」で可能に
減産に入ると、数カ月前に発注していた部品や資材が必要なくなるほどの事態となる。今回の減産は極端で、類を見ないものである。しかし発注はしてしまっており、契約により購入しなければならない。そこで、数カ月分の減算資金が必要となってしまう。
【前回は】マツダ、ホンダ、日産、生き残れるのか? (12) トヨタの自信の裏付け「TNGA」の「平準化」
逆に増産となった時、少ない数しか発注していない事態となる。ラインは増産に転じていても、資材が間に合わない事態となる。また、うまくいっても売り上げが数カ月先でないと現金化できない状態だ。その間、資材を買い続けなければ増産もできない。先行して多くの資材を買わなければならない資金が増産資金だ。
これらの状況の時、ジャストインタイムが出来ていると「減算資金」・「増産資金」が極限できていることになり、最小の資金でV字回復もできることを示している。これは、生産システムによって資金量が決まるビジネスモデルを理解していないと準備できないことだ。「多種少量生産」は、資金を最小にする作業工程の革新だ。リードタイムが驚くほど短縮されるため、資金が極限される。
例えば、部品をグローバル発注していると、数カ月先まで契約している必要がある。つまり、今回のように急減速しても部品は契約通り引き取らねばならない。増産するにも数カ月前から発注しなければならず、前もって支払わねばならない部分が多くなる。
しかし、下請けサプライヤーと運命共同体としての部品供給が出来ていると、すぐに減産が行うことが出来、増産にもすぐに入れることとなる。これが、下請け制度の強みでもある。それは、生産工程が多種少量生産になっていなければ出来ないことだ。材料仕入れから急ブレーキがかけられる状態であることだ。
つまり、製造業のビジネスモデルの確立は、生産技術と一体なのだ。「技術は買って来ればよい」との認識では、中間での資金需要が大きすぎて、危険になる確率が上がる。
企業経営では「イ・ロ・ハのイ」である。しかも、仕入れ先企業を今回のブレーキで「切り捨てて」減産することはできるが、再始動の時、同じ企業が協力してくれないことも大いにある。すると、「安定した品質」を保ったままのサプライチェーン構築が出来ない。金融知識では思いつかない基礎的サプライチェーン構築の経営技術だ。
つまり、「下請け」との信頼関係を構築しておかないと、「総資金量を最小としたサプライチェーン」ができないのだ。製造業で「造り方」と「資金需要」「コスト」を切り離して考えると、日産、ホンダなどの失敗を呼んでしまう。金融知識だけで投資感覚の経営をすることは自殺行為に等しいのだ。少なくとも長期的には資金不足に陥り、商品開発まで削っては営業が成り立たなくなり、値引きなどが起こり、ブランドまで傷つけてしまう。
マツダはその逆で「値引きせずに売れるプレミアムブランド」を目指している途中だったことが悔やまれる。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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