JAXA、最後となる「こうのとり」9号機の打ち上げに成功

2020年5月23日 09:15

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こうのとり9号機を搭載したH-IIBロケット9号機が打ち上げられる様子 (c)三菱重工/JAXA

こうのとり9号機を搭載したH-IIBロケット9号機が打ち上げられる様子 (c)三菱重工/JAXA[写真拡大]

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は21日、宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機を載せたH-IIBロケットの打ち上げに成功したと発表した。新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより経済活動や社会生活に甚大な影響が及ぶなか、JAXAは万全を期して準備を進めてきたという。

【前回は】「こうのとり8号機」搭載のH-IIBロケット、打ち上げ成功 実験棟「きぼう」とは

■世界最大級の補給能力をもつ

 こうのとりはJAXAが開発した無人宇宙船だ。最大約6トンもの補給能力は世界最大級であり、補給物資は国際宇宙ステーション(ISS)へと運ばれる。補給物資には、ISS用の新型バッテリーや窒素のタンク、宇宙飛行士の食料や水などが含まれる。

 こうのとり9号機を乗せたH-IIBロケットは2時31分に種子島宇宙センターから打ち上げられ、25日にISSに到着する予定だ。到着後26日未明にはこうのとり9号機はISSへの結合が完了するという。

 今回、日本実験棟「きぼう」用に固体燃焼実験装置や超小型衛星搭載用地球観測カメラ、宇宙アバター用カメラなどの機器もこうのとり9号機に搭載された。ISSに連結されたきぼうでは、宇宙放射線が降り注ぎ大気がほとんどない特別な環境を活かし、実験室ではさまざまな宇宙実験が実施されている。

■最後になるこうのとりの打ち上げ

 JAXAはこれまで9機のこうのとりの打ち上げに成功してきた。こうのとりの検討は1994年から始められ、1998年1月に開発へと移行した。「キャプチャー・バーシング方式」と呼ばれるロボットアームを使用したISSへの結合が世界で初めて採用され、米民間補給機であるシグナスやドラゴンにも同方式が使用されている。

 こうのとり1号機は2009年9月11日に打ち上げられ、18日にISSの結合に成功した。その後もこうのとりは9回打ち上げられ、今回を除く8回すべてでISSへの結合に成功している。

■技術実証にも使用される後継機

 今回実施された9号機の打ち上げは、こうのとりにとって最後のミッションだ。JAXAは後継機としてHTV-Xの開発を進めている。本体の軽量化により、より重い物資の運搬が可能になるという。冷蔵庫や小動物用の飼育ケージといった電源が必要な荷物を積載できる。またHTV-Xが技術実証のためのプラットフォームとして活用可能になる。

 JAXAは2021~2022年に1号機が運用されるとしている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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