トヨタ、21年3月期は営業利益8割減の予測 コロナ禍により販売台数減見込む

2020年5月14日 12:14

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決算発表会で会見を行うトヨタ自動車の豊田章男社長。(画像: トヨタ自動車の発表資料より)

決算発表会で会見を行うトヨタ自動車の豊田章男社長。(画像: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]

■20年3月期の売上高は前期比1%減、純利益は10.3%増

 トヨタ自動車(7203)は13日大引け後、20年3月期通期(米国基準)連結決算を発表。売上高は前期比1%減の29兆9,300億円、営業利益は同1%減の2兆4,419億円、純利益は同10.3%増の2兆761億円だった。期末配当は前期末と同様に1株120円とし、通期配当は前期据え置きの1株220円となった。

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 21年3月期の業績予想に関しては、売上高が前期比19.8%減、営業利益が同79.5%減と大幅に落ち込む予想を示した。要因はコロナ禍による販売台数減を見込んだためだ。尚、為替の想定レートは1米ドル=105円、1ユーロ=115円とした。

■コロナ禍による販売台数減により1,600億円の損失

 世界を代表する自動車メーカーのトヨタにとっても、コロナ禍による影響は避けられなかった。20年3月期の国内外を合わせた連結販売台数は、前期比0.2%減(1万9,000台減)の895万8,000台となり、業績に影響を与えた格好だ。トヨタの発表によると、新型コロナウイルスに関連した販売台数減による営業利益への影響は、1,600億円の損失と示した。

 また、20年3月期は為替の変動が激しく動いたこともあり、為替変動による影響を3,050億円のマイナスとみており、これら外部要因を除くと業績としては好調に推移した模様。セグメント状況を見てみると、自動車事業では売上高が前期比0.8%減の26兆8,635億円だったものの、営業利益は同0.7%増の2兆523億円と改善し、原価改善や諸経費減少に取り組んだ成果がでている。

■コロナ禍の影響を鑑み1兆2,500億円の資金調達

 終息が見えない新型コロナウイルスの長期化を懸念し、国内の複数金融機関と最大1兆2,500億円の借入契約を締結、手元流動資産の確保に動いている。今回の資金調達は自社の資金繰りのみならず、取引先であるサプライヤー向けの資金供給への用途も検討されており、自社のサプライチェーンを護る意味合いもあるものと言えよう。

 複数の企業が業績予想の公表を見送る動きが出る中、トヨタは一部ではあるものの業績予想を発表した。豊田章男社長はオンライン会見において、トヨタが基準を示すことで、自動車産業への波及効果や他業種への悪影響を避ける一助になるのではと述べた。日本を代表する企業としての影響度を考慮し、業績予想を発表した格好だ。

 かつてリーマンショック時には赤字に転落し、事業継続の危機を迎えたこともあったトヨタだが、手元資金は借入を含め約8兆円を有し、目先の安全性は確保している。コロナ禍の長期化を回避できれば販売台数予想も上向き、業績予想の上方修正も十分に見込めるだろう。(記事:拓蔵・記事一覧を見る

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