火星に人類が居住できる可能性は 米研究所による研究

2020年5月12日 14:26

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火星表面 果たしてここには水分が存在しているのだろうか (c) NASA

火星表面 果たしてここには水分が存在しているのだろうか (c) NASA[写真拡大]

 米国サウスウェスト研究所は、火星の大気をモデル化し、人類の居住可能性を探る研究を行った。その論文が、5月11日にイギリスNature Astronomy誌で公表された。

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 2020年は、火星への航行の効率が非常に良いタイミングにあり、火星は太陽系の惑星の中で、最も注目を浴びる存在となっている。世界では米国「Mars 2020」、中国「HuoXing-1」、欧州「ExoMars」(ロシアと共同)、アラブ首長国連邦「Hope」といった火星探査ミッションによるロケット打ち上げが、相次いで予定されている。

 火星は地球に比べて低温で非常に乾燥しているため、水分が液体を保持して蒸発を回避するためには、水滴に大量の塩分が含まれている必要がある。過去の研究では、火星には大量の塩分が存在していることが判明しており、火星表面には塩分を大量に含んだ水が存在する可能性も十分に考えられている。

 今回の研究では、この塩分を含んだ水が火星の表面、あるいは表面にごく近い火星の内部でどの程度の量が存在し、それらがどの程度の間存続しうるのかについて、考察を行った。それによれば、火星の乾燥気候において、塩分を含んだ水が蒸発することなく、しかも液体状態を維持するためには、最高温度が-48度以下でなければならないとの結論を得ている。

 このことは、火星表面において、温暖な季節には塩水の40%以上が液体でいられるが、寒冷季節に液体でいられる塩水は2%程度にまで減少することを意味している。このような環境では、たとえ地球上の極限地域に存在する驚異的な生命体であっても、生きていくことはできないだろうと研究者たちは考えている。

 人類が火星を目指す理由は大きく分けて2つある。1つは地球以外での生命の存在について確かめること、そしてもう1つは、将来人類が火星に移住できる可能性を探ることである。

 前者は純粋に人類の好奇心に由来する目的であり、もし仮に火星で生命の痕跡を見出すことができなかったとしても、人類が被る損失は特にない。だが後者については、火星が人類の居住に適さない惑星であることがはっきりした場合、問題は深刻となる可能性も秘める。

 今回の研究論文がもたらした結論は、人類どころか驚異的な生命力を持った存在であっても、火星環境で生きていくことは絶望的であるというものであった。人類が未来永劫繁栄し続けていくためには、私たち1人1人が地球環境を大切にして生きていくという自覚が非常に重要であることを、この研究論文は示唆している。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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