肉眼で観測できるSWAN彗星 4月に発見されたばかり

2020年5月5日 17:39

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 久しぶりに肉眼で観測できることが期待されていたアトラス彗星がバーストし、もはや大きな増光が期待できないとのニュースが最近報道され、落胆させられた。だが今度は、4月11日に発見されたばかりのSWAN彗星が、肉眼で見える明るさになるとの情報が英国EXPRESS誌で報じられた。SWANと名の付く彗星は複数存在しており、今回報道されたSWAN彗星の正式名称は、識別のためにSWAN2020と表現されている。

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 SWAN2020は、5月12日に地球に最も接近し、その距離は0.56天文単位、つまり太陽までの距離の約半分にまで近づき、明るさは3等星以上になるという。既に現在でも南半球では、肉眼で見える状況にある。また、もしも予想通りに3等星以上の明るさになれば、北半球でも見ることが可能になるとも報じられている。

 そもそもSWAN彗星の名称は、欧州宇宙機関 (ESA) とアメリカ航空宇宙局 (NASA) が共同開発した太陽探査機SOHOに搭載されたSWAN(太陽風観測カメラ)によって発見された彗星を指している。この彗星は4月11日にオーストラリアのアマチュア天文学者であるマイケルマッティアッツォが、SWANによる撮像データを分析して発見したものである。

 SWAN自体は彗星探索を目的とした機材ではなく、太陽系の水素分布の観測に用いられているが、SWAN2020が持つ氷の塊から大量の水素が放出されているために、観測の網に捉えられたというわけだ。だが、このSWAN2020には気になる情報もある。というのもアトラス彗星同様にバースト過程に既に入っているのではないかと主張する科学者もいるからだ。

 それにしても、発見からまだ1カ月に満たないこの彗星の情報は、最近の観測技術の著しい進歩と情報公開の成果を象徴した出来事である。SOHOによる観測データはNASAによってインターネット上で公開されている。したがってその気になれば、誰にでも新しい彗星を発見するチャンスはあるのだ。とはいえ、膨大なデータをくまなくチェックし、ごく小さな画像上の彗星の兆候を見出すことは、並大抵の作業ではないことは言うまでもない。

 SOHOがもたらすデータで発見される彗星は、太陽に比較的近い距離にあるため、発見から最大光度に達するまでの時間は、SOHO以外で発見される彗星と比べると短い。したがって、発見のニュースが報じられてすぐに、最大光度に達するため、肉眼で彗星を見るための準備期間もあまりとれないということが難点でもある。

 例えば、南半球でしか見えない彗星を観測したいと思っても、飛行機の予約がとれず肉眼で見られるチャンスを逃してしまうという可能性もあるのだ。とはいえ、肉眼で彗星が見られる情報が従来以上に頻繁にもたらされる可能性が高まったことは、喜ばしいことである。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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