新型コロナに打ち勝つ有望な戦略は? 米大学の研究

2020年4月30日 18:27

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 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)用の治療薬やワクチン開発に、世界中の研究機関が取り組んでいるが、実用化されるまでには時間がかかると予想される。国際オンライン学術誌Frontiers in Microbiologyにて、米ノースキャロライナ大学チャペルヒル校の研究者から構成されるグループによる、新型コロナウイルスに打ち勝つ有望な戦略をまとめた論文が24日付で掲載されている。

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■新型コロナ予防に有力な4つの戦略

 研究グループによると、もっとも有力なアプローチとして、レムデシビル等の抗ウイルス薬や遺伝子治療を挙げている。新型コロナウイルスをコントロールする新たな対処法がまず考慮されるべきだという。

 もっとも効果的なのがワクチンだ。現在のところ、最も成功しているのが新型コロナウイルスの膜(エンベロープ)にあるスパイクタンパク質と、ヒト細胞の細胞膜の受容体との結合を阻止する方法だ。弱毒生ワクチンや不活化ワクチン、サブユニットワクチンのほかにも、DNA/RNAワクチンやウイルスベクターワクチン等が考慮されるべきだという。ただし臨床試験が終わるまでに通常は数年かかるために、ほかの戦略を採用することになる。

 次に有効な戦略として、ヌクレオチドアナログのプロドラッグといった薬効範囲の広い抗ウイルス薬が挙げられる。レムデシビルもそのひとつであり、ウイルスRNAの産生を減少させる。ただし新型コロナウイルスに対し、ヌクレオチドアナログのプロドラッグはあまり機能していないことが判明している。

 患者から採取した回復期の血漿を投与するのが、第3の戦略だ。低いレベルの抗体をもつため、短期的には免疫として機能する。

 研究グループが最後に挙げたのが、アデノ随伴ウイルス(AAV)による遺伝子治療だ。抗体やイムノアドヘシン、抗ウイルス性ペプチドや免疫調節薬を上気道に素早く導入でき、短期的な予防が可能だ。細胞はすぐに代謝するので有毒性のリスクも最小限に済み、1カ月程度で臨床試験も実施できる。

■将来現れる新型ウイルスにも適用可能

 研究グループによると、新型コロナウイルスに限らずSARSウイルスやMERSウイルスにも同様の議論が当てはまるという。

 現在、数十万人規模の研究者や臨床医が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬やワクチン、診断テストの開発に力を注いでいる。Google ScholarによるとCOVID-19関連の論文が1,650を超え、数十もの論文が毎日加わっている。ただし継続中の臨床試験は460以上だが、大多数は初期段階だという。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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