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進まぬ「遠隔診療」の背景と是正策を考える
コロナウイルス禍は「医療崩壊」の危機をもたらしている。危機から脱するためには1日も早く「遠隔(オンライン)診療」の促進が求められる。論も高まりをみせている。
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4月14日時点で、各都道府県がまとめたところでは新型コロナウイルスによる死亡者は162名。そのうち病院に入院していて院内感染し死に至った数は36名。高齢者施設の入居者と通所していて感染、死亡した数は64名。合わせると4割近くになる。
コロナウイルス感染者には無症状の羅漢者が多い。それが記した様な「(医療従事者を含めた)院内感染」につながっているといえる。そんな現実を耳にすると、遠隔診療の必要性を一層痛感させられる。
説明するまでもないだろうが「遠隔治療」とは、診察システムを開発しているニプロを例に記すとこんな枠組みだ。医療機関側でパソコンに専用ソフトとカメラを設定し、患者側ではスマートフォンにアプリを入れる。ビデオ通話で診察し、診察結果を伝える。処方箋データ薬局に送り、自宅や療養先で薬を受け取るという流れだ。
日本では欧米に比べ遠隔診療が遅れている、とされる。何故か。こんな流れが指摘できる。
★医師法第20条の壁:「医師は自ら患者と直接対面し診察した上で治療を施した場合でなくては、診断書・処方箋を交付してはならない」状況が続いてきた。
★2015年厚生労働事務連絡:「遠隔診療も疾病に対して一応の診断を下し得る程度のものであれば、20条に抵触するものではない」で道は開けたかに見えた。だが「対面診療の補完的」とする位置づけとみなされた。事実、遠隔診療の範囲は高血圧・糖尿病・喘息・認知症・てんかんなど限定的だった。
★医師の姿勢:17年度の「医療IT化に関する調査」(東京都医師会)では遠隔診療について、「どちらかといえば賛成38・9%」に対し「どちらかといえば反対38・4%」と拮抗している。
★拮抗の背景(1):遠隔診療も「初診は対面が必須」に加え「直近3カ月間にオンライン診療を行う医師と、毎月対面診療を行うこと」という縛りがある。
★同(2):遠隔診療と対面診療の報酬の差。問診をした上で処方箋を出すなどの同じ診療行為をした場合では、対面に比べ遠隔診療の報酬は1000円以上安くなるという。
果たして、「医療崩壊」という危機をももたらしたコロナウイルス禍は遠隔診察(診療)に関する潮目を変える契機となるのだろうか。
政府は2月25日「新型コロナウイルス感染症の基本方針」で、「感染防止の観点から、電話による診療等により処方箋を発行するなど極力、医療機関を受診しなくてもよい体制を構築する」と謳った。これを受け厚労省は28日、「(コロナウイルス感染で重度化のリスクが高い)慢性疾患者に対する遠隔診療、服薬指導を認める」とする事務連絡を発信した。
まずは「初診は対面」という縛りを解き、遠隔診療に対する報酬制の見直しが必須条件となろう。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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