120年ぶりの民法改正 相続に関する配偶者優遇措置とは

2020年4月19日 16:53

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 コロナショックの真っただ中である2020年4月1日、改正民法が施行されることになった。民法の改正は120年ぶりといわれるが、目的としては判例の明文化や社会経済への対応など、時代に即したものとなっている。

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 その中でも特に、少子高齢化社会を起因とした相続問題に関する民法改正の内容については、ぜひとも理解しておきたいポイントだ。

 相続問題に関する民法改正の内容は、大きくまとめると、配偶者への優遇措置、遺言に関する緩和措置、介護に関する金銭要求、預貯金払戻し制度新設、遺留分侵害額請求権の5つであるが、今回は配偶者への優遇措置について解説したい。

 配偶者への優遇措置については、居住用不動産の贈与に関しての優遇と配偶者居住権の新設に大別されるが、いずれも被相続人の死後において、配偶者がマイホームに住み続けられるような措置だ。

 相続人の遺産として残されるマイホームは当然遺産分割の対象になり、被相続人の死後も配偶者がマイホームに住み続ける場合には、他の相続人へ相続の不足分を充足させる必要があった。

 もちろん、遺産分割協議などで配偶者への相続を認めれば済む話ではあるが、親子関係が良好でない場合などにはそうともいかず、配偶者に相続不足分を充当するだけの十分な預貯金が無ければ、立ち退きすら求められることがあったのだ。

 このような事態を憂慮し、婚姻期間が20年以上である夫婦間において、居住用不動産の遺贈または贈与については、遺産分割の際に相続財産としてみなさないという優遇措置と、権利として所有権に対抗できる配偶者居住権が新設されたのである。

 配偶者居住権については、たとえ配偶者がマイホームの権利を相続しなかったとしても、マイホームに住み続けることができる権利であり、いわば所有権を使用権とその他の権利に分類したものと理解されたい。

 マイホームの所有権を分離することで、配偶者が使用権(配偶者居住権)を相続し、その他の権利を他の相続人が相続することで、見かけ上の遺産分割とできるのである。

 なお、この配偶者居住権が認められるのは、相続発生時にマイホームに住んでいた配偶者にだけであり、また登記も必要なことなどには注意が必要だが、骨肉の争いともなりうる遺産相続の解決策としては、大いに期待される措置といえるだろう。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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