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BCGの予防接種が新型コロナに効いている? (2-2) 因果関係は解明できるか?
日本では1949年にBCGワクチンの接種が義務化され、1951年には全面的な接種が行われている。持病を持つ高齢者が新型コロナウイルスの犠牲になる例が多いと報じられているが、70歳以上の高齢者にはBCGの接種が行われていないことがポイントかも知れない。
【前回は】BCGの予防接種が新型コロナに効いている? (2-1) 状況証拠では”ビンゴ”だが!?
もちろん、高齢者が新型コロナウイルスに罹患すると重篤化する事例が多い理由には、体力の低下など固有の条件が複雑に絡み合っているため、因果関係があると即断できないが、無関係だと言い切れないことも確かである。
オーストラリアやオランダでは、医療スタッフを対象にして、BCGのワクチン接種と新型コロナウイルス感染症の重症化との関連を検証するため、臨床試験が開始されているようだ。治療にあたるべき医療スタッフが、新型コロナウイルスに感染して治療現場を離脱する事例が数多く報告され、医療崩壊の懸念が現実味を帯びている現状を考えると、感染を少しでも抑えたいという気持ちが直接伝わってくる話題である。
但し、BCGワクチンには乳幼児が重症結核症に罹患することを予防をする明確な目的があり、日本では1歳未満から5歳未満の間に接種することとされている。5歳以上の年齢に対する有効性が確認されていない以上、大人の医療従事者に対する有効性をどんな形で検証するのかという問題は付きまとう。
また、BCGワクチンが新型コロナウイルスに「効く」という認識が独り歩きを始め、接種を希望する高齢者が出現する事態も報告されているが、BCGワクチンは乳幼児への接種を目的として計画的に製造されているため絶対量に限りがあり、おいそれと流用させることは出来ない。
日本ワクチン学会も4月3日に発表した「見解」で、「新型コロナウイルスへの有効性を、否定も肯定も出来ない」こと、「主たる対象が乳幼児であり、高齢者への接種を想定していない」こと、「乳幼児への安定供給を阻害してはならない」ことを表明し、事実上流用を否定している。
今や世界に広がる一大関心事の、BCG接種の新型コロナウイルス感染症に対する抑制効果の有無を検証することにも、大きな困難がある。新型コロナウイルスは感染が拡大しているとはいえ、罹患率は1000人当たり2人とごく少数であるため、その罹患率を統計的に有効な数値とするためには、被験者が膨大な数に上ることが想定されるためだ。
国家の研究所に置き換えても抱え切ることは難しい。WHOクラスの国際機関が人類共通の”謎”を解明するくらいの意気込みがなければ、実現は困難かも知れない。
それにしても、新型コロナウイルスによる死亡者数が人口100万人当たり0.7人という日本を、世界は驚嘆の目で見つめている。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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