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ロータリーエンジン不評要因の分析
パークウエィ26RE(有限会社オークラオートサービス使用許諾 http://www.okura-auto.co.jp/rw/album/ta13l/image/pw000003.jpg)[写真拡大]
●石油危機とマスキー法対応の誤算
1970年の大気浄化法改正法は、通称マスキー法(Muskie Act)と呼ばれ、当時の米国ビッグ3はもとより、欧州メーカーも軒並み対応は不可能と表明し、世界的にも達成不能と云われた米国の排気ガス規制である。
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この、どのメーカーもクリア出来ないとされた「マスキー法」を、日本の「マツダREAPS」と「ホンダCVCC」だけがクリアした。
マスキー法に対応する方策として、マツダが採用したこの「REAPS」と云う排気ガス処理システムは、お得意のロータリーエンジンと組み合わせた「サーマルリアクター」と云う、「湯たんぽ」みたいな部品を使用する。
排出されたばかりの高温の排気ガスを「サーマルリアクター」入れ、そこに新たに空気を供給して燃え残った有害物質である「一酸化炭素:CO」や「ハイドロカーボン:HC」を燃やす(+O2=酸化させる)ことで、CO+O2=CO2、HC+O2=CO2+H2Oつまり、無害な二酸化炭素(炭酸ガス)と水に変えるシステムだ。
当時のマツダは、「マスキー法」を突破するには、多少燃費に目をつぶっても、規制をクリアすることを優先した。その結果、直後に起こった石油危機で、燃費面での悪評を受ける結果となった。
ロータリーエンジン燃費の擁護論は、また稿を改めたいが、このREAPSの印象が強烈だったから、ロータリーは「本質的には燃費が良い」と云うと、一様に「そんなはずは無い!」と反論される場面が多い。
●ロータリーエンジン搭載車種展開の誤算
車種展開でも、ロータリーエンジンの普及を急ぐあまり無理があったと思う。
ロータリーエンジンは、高速回転に向いている。独楽を想像してもらえば判り易いが、独楽は元気良く回っている間は安定しているが、次第に回転が落ちてくるとフラフラと不安定になる。
ロータリーエンジンも高速では安定しているが、低回転は弱い。
本家のNSUが市場投入したロータリーエンジンは、吸気ポートをローターハウジングに設けたインレットポートから吸入する「ペリフェラルポート」方式としていた。
これは、高速向きレシプロエンジンの、インレット(吸入)バルブとエキゾースト(排気)バルブのオーバーラッピング(吸気バルブと排気バルブの双方が開いている)時間が長いモデルに相当する。
高回転向きシステムで、低回転域では不安定になりがちだ。
そこでマツダはインレットポートをローターハウジングでは無く、サイドハウジング側に設けた「サイドポート」方式を採用した。
この方式は、吸気ポートがほぼ閉じた段階で排気が始まるので、オーバーラッピングの時間が短くなる。つまり、「レース用エンジン」を「市販スポーツカー用エンジン」にモディフィケーションしたもので、高回転・高出力エンジンであることに変わりは無い。
本来、ロータリーエンジンの特性としては高回転・高出力のスポーツカーに代表される車両向きで、トラックやバスの様な低回転・低速トルク重視の車向きでは無い。ところが「マイクロバス」や、対米輸出用ではあったが、「ピックアップトラック」にまでロータリーエンジンを搭載したモデルを投入した。
REマイクロバスに乗車した経験からは、当時の一般的なマイクロバスの振動、騒音とは別次元の静粛性、快適性を備えていたが、低速、低回転域では少々物足りなさを感じた。ここはやはり、スポーツカーや高性能スポーティセダン専用にして、じっくりと育てたかったところだ。
●燃費に対するユーザーの受け取り方
当時の軽自動車の上級スポーツモデルなどは、結構燃料を喰っていた。その場合、軽のユーザーは、「俺のクルマは軽で燃料も喰うけど、普通車のスポーティモデルよりも早いぜ」とか云って、燃費の悪さに折り合いをつけていたと思う。
いくら速くても加速が良くても、上級機種がロータリーエンジン搭載セダンで、同じ車種の下位グレードにレシプロエンジン搭載機種があれば、つい比較してしまうのは仕方ない。
RX-7の様なロータリーエンジン専用車を中軸に展開するべきだったのでは無いか。
●ロータリーエンジン車の復活を切望する
何台もロータリーエンジン車を乗り継いだ経験から、天井知らずの吹き上がりと圧倒的な加速の魅力は忘れがたい。高速道路を利用しての、長距離ツーリングの様な本来のスポーツカーとしてのシーンなら、燃費に関しては十分許容出来るはずだ。
現時点では生産が中断されているが、是非復活して欲しいものだ。
将来、「水素社会」が到来した際には、「水素燃料」車にロータリーエンジンは最適のシステムである。ロータリー復活の日を待ちたい。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
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