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クルマは『ハンドルで曲がるべきか? アクセルで曲がるべきか?』それが問題だ (3/3)
BMW 1シリーズ。(画像: ビー・エム・ダブリューの発表資料より)[写真拡大]
ここで、「ターボラグ」について説明しておく。「排気タービンで吸気タービン」を回す、つまりエンジン排気の勢いが強まってこないと、吸気タービンは回らない。そのためエンジンのアクセルを踏み始めてから、排気タービンの勢いがつくまでに、多少の時間差が出ることを「ターボラグ」と呼んでいる。
【前回は】クルマは『ハンドルで曲がるべきか? アクセルで曲がるべきか?』それが問題だ (2/3)
ターボラグがあると、アクセル調整によってクルマの姿勢を変えることを行っているドライバーにとっては、自由にエンジン回転をコントロールできなくなるのだ。駆動輪を含めてタイヤのスリップ状態をコントロールし、クルマの進む方向を決めている時には、かなり問題になる「ターボラグ」によるタイムラグなのだ。
ターボチャージャーの開発の歴史を見ると、第2次世界大戦当時、戦闘機や爆撃機で高空になると空気が薄くなり、自然吸気(NA)ではエンジン出力が極端に低下するため、強制吸気を必要としていた。その時、ゼロ戦など日本の飛行機には、「スーパーチャージャー」が取り付けられていた。しかし、「スーパーチャージャー」はエンジンクランクシャフトから直接吸気タービンを回す仕組みのため、「馬力ロス」が起き、吸気が出来る割には効果が出ずに馬力向上が出来なかった。
それに対して、アメリカB29などでは「ターボチャージャー」を備えていたため、1万メートルの上空でも出力が確保できたので、日本の防空戦闘機を寄せ付けなかった。その時、B29には「ターボラグ」が存在したが、飛行機のエンジンでは「スロットル(車ではアクセル)」操作から6~7秒は今でもかかっており、問題ではないのだ。
クルマの話に戻ろう。BMWは、FRのハンドル特性を重視してFRにこだわってきた。そのため、初代BMW1シリーズでは、小型のボディではFRが損であるのを承知でFRを採用していた。
しかし、今回2代目でFFに変更し、小型車のパッケージングを有利にしてきている。その背景には、小型車のオーナーではFRにこだわる人が少なくなってきたことを受けているのであろう。それでも、BMW伝統のハンドリングを残そうと努力しているようだ。
「自動運転」が始まろうとする現代の自動車では、ハンドリング特性を問題とするドライバーは少数となり、安全であればハンドリング特性を「商品価値」として問題としない時が迫っている。また、現在では「統合スキッドコントロール」をシステムとして備えているクルマが増加して、「FFか?FRか?」などにこだわるドライバーは少数派であろう。
もうすぐ、車の機械メカニズム部分は問題視されない時代がやってくるのだろうか。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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