イタリアで二酸化窒素排出量が減少 新型コロナが原因か ESAのデータ

2020年3月17日 11:23

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 大気質監視衛星コペルニクス(Sentinel-5P)の最近の観測によれば、イタリアでの二酸化窒素排出量に顕著な減少傾向が見られたとの情報が13日、欧州宇宙機関(ESA)のホームページ上で公開された。

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 イタリア政府は2月22日の閣議で、新型コロナウイルス感染の拡大防止に必要な対策を講じる権限を州政府に付与している。その直後にイタリア北部に位置するロンバルディア州とベネト州内の計11の自治体では、州政府により他自治体との出入りが禁じられ、事実上、封鎖状態となっている。

 またイタリアのジュゼッペ・コンテ首相は8日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため新たな首相令を出し、大都市ミラノがあるロンバルディア州全域と北部の14県で大規模な移動制限を始め、翌日にはイタリア全土に制限を拡大すると発表。

 ESAが13日に公表したデータによれば、二酸化窒素排出量の減少傾向は特にイタリア北部地域で顕著に見られる。これは、イタリア政府が拡散防止対策として打ち出した、都市封鎖の施策とも一致している。

 二酸化窒素は大気汚染物質として自動車の排ガス規制で取り上げられているNOxの一種である。つまり、都市封鎖の施策によって、自動車による移動が制限された結果、人口密集地域における二酸化窒素排出量の減少につながったと考えられる。

 ESAのホームページでは、イタリアを中心としたヨーロッパにおける1月1日から3月11日までの二酸化窒素排出量変化(10日間における移動平均値)を、動画で見ることができる。これを見ても、新型コロナウイルス感染者が増加し始め、イタリア国内での都市封鎖措置が発令されて以降、二酸化窒素排出量減少が顕著になっていることが良くわかる。

 動画内において、二酸化窒素の排出量値として10日間の移動平均を採用している理由は、天候変動による測定値の微妙な変化の影響を、最小化するためである。例えば大風が吹けば、有害物質もそれによって移動してしまい、排出地域を特定できないという問題が生じる。このような弊害を最小限に食い止め、全体としてのトレンドを適切に把握するために移動平均値はしばしば用いられる。

 もともとコペルニクスは、主に大気汚染物質などの排出量を監視する目的で、2017年に打ち上げられた人工衛星だったが、大気汚染状況の把握のために収集したデータが、意外な形で地上で起きている感染症による影響を報じる結果となった。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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