高齢者の転倒を予測するAI「Coroban」、学会推奨品に FRONTEOらが開発

2020年3月13日 12:20

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Corobanの画面イメージ。(画像:FRONTEOの発表資料より)

Corobanの画面イメージ。(画像:FRONTEOの発表資料より)[写真拡大]

  • Concept Encoderが転倒リスクを評価する仕組み(画像:FRONTEOの発表資料より)

 FRONTEO(フロンテオ、東京都港区)は9日、AI(人工知能)を使った転倒転落予測システム「Coroban(コロバン)」が、日本転倒予防学会により推奨品として認定されたと発表した。Corobanは、FRONTEOがエーザイ(東京都文京区)と共同で開発したもので、自然言語処理AIを利用し、看護記録のテキストデータなどから転倒リスクを評価できるという。

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 東京消防庁によると、高齢者の救急搬送者のうち転倒・転落による事故が最も多く、全体の約8割を占めるという(東京消防庁「救急搬送データ2016年」より)。また、厚生労働省の統計を基に消費者庁が作成したデータによると、高齢者の不慮の事故による死亡者数は2016年に約2万7,000人を数えるが、そのうち転倒・転落による死亡者数は7,116人。これは2007年の5,476人から増加している(厚生労働省「人口動態調査」調査票情報を基に消費者庁で作成したデータを引用)。

 死亡に至らなくても、骨がもろくなっている高齢者が転倒して骨折すると寝たきり状態になるケースも少なくない。しかも人手不足に悩む介護現場では、細心の注意を払っていても、転倒リスクを予測して防止することはなかなか難しい。

 Corobanは、FRONTEOが独自開発した自然言語処理AI「Concept Encoder(コンセプト・エンコーダー)」が使用されている。電子カルテのデータを学習・解析し、患者の状態や看護記録から転倒転落のリスクを予測し提示する。同AIは、膨大な自由記述のテキストデータなどのメディカルデータを、エビデンスに基づいて解析・活用することを目的に開発され、テキスト以外のデータとの共解析も可能だという。

 FRONTEOは、ほかにも「KIBIT」という自然言語処理AIを開発している。こちらは、少ない教師データからユーザーの好みなどの傾向を把握できるという。暗黙知をデータ化し学習できることが特徴で、「人間の機微を感じとる」日本初のAIエンジンとしている。主にデジタルフォレンジック(証拠データの復元)やeディスカバリ(電子証拠開示)など、法曹分野で活用されてきた。

 同社では、今後もライフサイエンス分野で蓄積されてきた遺伝子発現情報や、バイタルなどの数値データとの共解析の研究を進めていくとしている。(記事:Kei_T・記事一覧を見る

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