アルマ望遠鏡、ビッグバンからわずか9億7000万年後の巨大銀河を発見

2019年12月31日 15:04

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アルマ望遠鏡によって観測された星形成銀河「MAMBO-9」の電波画像。2つの部分で構成される銀河は、合体の途上にあるという。(c) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), C.M. Casey et al.; NRAO/AUI/NSF, B. Saxton

アルマ望遠鏡によって観測された星形成銀河「MAMBO-9」の電波画像。2つの部分で構成される銀河は、合体の途上にあるという。(c) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), C.M. Casey et al.; NRAO/AUI/NSF, B. Saxton[写真拡大]

 テキサス大学オースティン校などの研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、ビッグバンからわずか9億7000万年後の巨大銀河を観測した。観測対象の「MAMBO-9」は重力レンズの助けなしに観測された天体としては、最も遠い銀河だ。

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■星形成銀河

 星形成銀河とは、活発に星を作っている銀河のことであり、恒星の材料である塵やガスを大量に含んでいる。その中には、太陽質量の10倍以上の質量をもつ恒星が、1000万年程度で作られている。「スターバースト銀河」と呼ばれる銀河もある。

 そもそも星はどのように生まれるのだろうか。星の材料は水素を主成分とする気体(ガス)である。宇宙空間は真空と言われるが、実はまったく無の世界ではない。地球上の大気とは比べ物にならない薄さだが、「星間ガス」と呼ばれるガスが広がっている。

 この星間ガスが何かの拍子で集まると分子雲となり、重力によって分子雲の密度がさらに高くなると原始星が誕生する。スターバースト銀河のように高い星形成率を実現するには、効率よく星間ガスを圧縮する機構があるはずである。有力なモデルとしては、銀河同士の衝突や接近などによって、星間ガスが圧縮されたと考えられている。

■銀河「MAMBO-9」

 銀河「MAMBO-9」は、10年前にスペインのIRAM 30m望遠鏡とフランスにあるビュール高原電波干渉計によって観測されていた。しかし、このときの観測では銀河までの距離は分からなかった。

 今回、アルマ望遠鏡の高感度によって、銀河「MAMBO-9」までの距離が約130億光年であることが明らかになった。「MAMBO-9」の塵とガスの量は膨大で、天の川銀河にあるすべての星の質量を合計した10倍にもなる。また「MAMBO-9」の星は、まだ形成前の状態にあるという。

 この発見によって、天文学者は初期宇宙における銀河や星の形成について、より理解を深められることが期待される。

 今回の観測成果は、米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載された。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る

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