【2019年末企画】カーオブザイヤー・10ベストカーから見える2019年の世界の自動車 (3/3)

2019年12月25日 06:30

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日本カー・オブ・ザ・イヤー2019-2020のトヨタ・RAV4(画像: トヨタ自動車の発表資料より)

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■第4次産業革命に際して

 第4次産業革命について、ネット社会の存在を挙げることが一般的に行われており、産業革命のこれまでの変遷について「蒸気機関・電気・コンピュータ・ネット」と分類するのは社会学者や経済学者の見方である。

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 しかし、これらを基に変化してきた技術革新の変遷を「大量生産(ロット)・多種少量生産(混流生産)・順序生産(受注生産)」であると理解できれば、産業革命の別の基準が「資金効率」であることが分かってくる。この法則性は資本主義経済である限り変わらない。すると次の動きが見えてくる。いわば、技術革新に裏付けされた「ソフト革新」であると言える。

■自動車のビジネスモデルはどう変化するのか?

 シェアリングサービス・自動運転などにおける変化では、「自動車を所有する」ライフスタイルが減少することが要因と考えられる。シェアリングサービスが普及すると、駐車場に昼間駐車している車が減ることとなるだろう。自動車全体の稼働率が上がるのだ。それは社会全体で資金効率が向上することを意味している。そのため、この流れは主流となって行くであろう。

 一方、自動運転は直接シェアリングサービスを行うことに繋がっている訳ではないが、日本独自の社会システムであるタクシーにおいては運転手がいなくて済むことから、普及する手助けとなる。トラック輸送も、自動運転化によってきめ細かくできるかもしれない。いずれもシェアリングサービスの普及を促すこととなる。

 こうした流れの中でも「所有する」ことは、少なくなれどもなくなることはあるまい。自動車を発注する立場からすると、自動運転の車は動力性能や操縦性が高い必要はなく、安全で乗り心地が良く、安ければ良いことになる。現在のタクシー仕様のさらに極端な形が考えられる。

 すると自動車メーカーに対する発注も「家電」のような感覚になり、カタログでの発注に傾くこととなろう。つまり「ネット発注」だ。ビックデータを利用できる企業が先行することとなり、ネット関連の仕事をしている企業が優位となる。

 そのときの自動車産業の製造部門の働きで必要なのは、順序生産であり、スウィング生産であろう。そうして受注生産でありながら、即納体制をとれる製造企業が生き残ることになり、ユーザーとのインターフェース部分は自動車メーカーではないかもしれない。AIを教育できるビックデータを握った企業が制することとなろう。そして、生産だけでなくシェアリングサービスなどまで手掛けることで、自動車メーカーは生き残れると見ておくことが出来る。

 こうして、自動車産業は「造り方」をさらに進めることが必要で、カーオブザイヤー選考に際して、判断基準を根本的に改める必要が迫っている。来年こそ、自動車ジャーナリストだけでなく、経済ジャーナリスト、製造業経営者などを交えて、評価することと願っている。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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