原始惑星系円盤の質量流出プロセスで、星の成長段階を判別 京産大の研究

2019年12月4日 14:01

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前主系列星の進化の模式図。ガス雲の中心で赤ちゃん星(原始星)ができると、原始星に向かって落ち込む(降着する)ガスの一部は円盤(原始惑星系円盤)を作り、ガスが恒星表面に向かって公転しながら降着する。この時、中心星の近くにあるガスの一部は、双極方向のガス流として星間空間へ放出される。その後、原始惑星系円盤の中で惑星を形成する材料である微惑星と呼ばれる小天体が形成され、やがて、微惑星同士の合体によって惑星が形成される。(画像: 京都産業大学の発表資料より)

前主系列星の進化の模式図。ガス雲の中心で赤ちゃん星(原始星)ができると、原始星に向かって落ち込む(降着する)ガスの一部は円盤(原始惑星系円盤)を作り、ガスが恒星表面に向かって公転しながら降着する。この時、中心星の近くにあるガスの一部は、双極方向のガス流として星間空間へ放出される。その後、原始惑星系円盤の中で惑星を形成する材料である微惑星と呼ばれる小天体が形成され、やがて、微惑星同士の合体によって惑星が形成される。(画像: 京都産業大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都産業大学の研究チームは、おうし座にある星形成領域の観測結果より、原始惑星系円盤の質量流出プロセスと円盤最内縁部の不透明度の関係を発見した。

■おうし座星形成領域

 おうし座星形成領域は、「おうし座・ぎょしゃ座暗黒星雲」とも呼ばれる暗黒星雲である。銀河系を構成する腕の中にある暗黒星雲で、ガスや塵が背後の星を隠して暗黒星雲と見えている。

 暗黒星雲の中にあるガスや塵は星の材料となるもので、暗黒星雲内では活発な星形成が行われている。暗黒星雲は星の形成過程を解明する上で、重要な研究対象である。

 おうし座星形成領域はおうし座、ぎょしゃ座、ペルセウス座にまたがっている。南北方向はおうし座のアルデバラン付近からぎょしゃ座のカペラ付近まで、東西方向はふたご座とおうし座の境からプレヤデス星団付近まで広がっている。

■今回の研究

 今回観測対象としたのは、おうし座星形成領域にある中質量星(太陽質量の1.5倍から4倍程度の質量の星)だ。これらの星は「前主系列星」と呼ばれ、主系列星に進化する前段階の原始星であり、年齢はおよそ100万歳である。

 太陽より重い星でも太陽系と同じように惑星が形成されるのかはよく分かっていない。そこで、太陽よりも重い星が形成されている現場の観測が必要になる。あまり重い星では進化が早すぎ数も少ないため、中質量星が観測対象として適切である。

 今回の観測で得られた近赤外線スペクトル形状の詳細な解析結果から、物質流出とダスト円盤の分布に以下の関係があることが分かった。

 (1)最内縁部(恒星から0.3天文単位の距離)までダスト円盤が存在する段階
 ⇒恒星からの自転軸方向のガス流が優勢

 (2)最内縁部のみが消失した段階
 ⇒円盤内側からのガス流が優勢

 (3)円盤全体が消失した段階
 ⇒ガス流なし

 これらの結果は、前主系列星の質量流出プロセスが円盤の成長段階に依存することを示している。今後、円盤の内縁部をより詳しく観測することで、恒星の形成過程の解明が期待される。

 本研究の成果は、2019年10月23日発行の『Astronomical Journal』に掲載された。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る

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