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ESA、休眠状態で宇宙飛行士を運ぶ長期ミッション想定の乗組員室デザイン発表
ESAは18日、宇宙飛行士を休眠状態にすることで長期の宇宙探査ミッションを実現する、という研究の初期の成果を発表した(ESAのニュース記事、 The Next Webの記事、 SlashGearの記事)。
研究は6名の宇宙飛行士を火星に送り、5年で帰還するという既存のミッション研究を題材に行われている。まず、宇宙飛行士を休眠状態にする最良の方法や緊急時の対応、安全性の確保、休眠状態によるチームの心理状態への影響などを検討したうえで、乗組員室の構造の初期のスケッチや、休眠状態を利用した火星ミッションの20年以内の実現に向けたロードマップを作成したという。
研究の結果、休眠状態による宇宙ミッションではクルーの居室や消費財を減らすことで、宇宙船の質量を3分の1程度、数トン相当縮小できることがわかったそうだ。想定される流れとしては、宇宙飛行士が事前に体脂肪を増やし、薬物の投与で休眠状態を誘発する。 柔らかい外殻の休眠ポッドの内部は暗くし、地球-火星間を移動する180日の間は内部温度を大幅に下げて休眠中のクルーを冷却するとのこと。休眠状態での宇宙飛行は21日の回復期間を経て終了する。長期にわたってクルー全員が休眠状態になることから、人工知能を活用してシステムを維持することになる。
動物の冬眠での研究成果からみて、休眠中にクルーの骨量や筋量が大幅に減少することはないと考えられるそうだ。また、クルーは移動中のほとんどをポッド内で過ごすため、水の入ったコンテナなどで周囲をシールドすることで放射線の影響も最低限となる。既存の研究によれば休眠状態自体が放射線耐性を強化する働きもあるとのこと。
熊のような冬眠する大型動物と同等に宇宙飛行士の代謝率を75%減少させることができれば、質量と費用の大幅な削減が可能となり、長期の探査ミッションの実現性が高まるとのことだ。
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