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窮地に追い込まれた三菱スペースジェット (4) 堪忍袋の緒が切れたサプライヤーも・・
「スペースジェット」(画像: 三菱航空機の発表資料より)[写真拡大]
三菱航空機がM90(旧MRJ)の就航を実現するまで、一人前の航空機メーカーとして認知されたとは言えない。今まで既に5回の納入延期を繰り返して、6回目の延期が間もなく発表されそうな航空機メーカーが「次は70席を用意します」と言っても、まともに検討を始める航空会社は限られるだろう。
【前回は】窮地に追い込まれた三菱スペースジェット (3) 主力機とするM100に、ローンチカスタマーが決まらない!
おまけに、親会社が事業化を正式承認していない状態だ。どんなワンマンでも腰が引けて当然だろうし、ローンチカスタマーの重責に耐えようとするフロンティアは限られる。仮に契約に進んでも、ゆるい契約解除条件を飲まされた上に、価格は思い切り叩かれることになる。収益性も安定性も期待できない事業になってしまう可能性すら出て来る。
M90のローンチカスタマーである全日空は、2013年に初号機の引き渡しを受ける予定で機材繰りを進めていた。5回目の納入延期で予定から7年の遅れとなったため、とうとうボーイング製の「B737-800」機を代替機としてリースで調達し、18年度から地方都市間の路線に投入している。高額のリース料が発生していると思われるM90の代替機は、M90の納入が伸びるたびにリース料が累積する。全日空はこのリース料をどうするか、公式には語っていない。
そして、同様のことは契約済みになっている他の航空会社でも起こっていて不思議ではない。契約不履行に起因する契約解除と同時に、経費や費用の補填を求める賠償請求だって考えられないわけではない。
同様に怖いのは、スペースジェットの量産化を期待して集合したサプライヤーが、しびれを切らして離脱することだ。高度の技術を結集した航空機の部材には、時代の最先端の技術がふんだんに取り入れられている。容易に代替品を用意することは難しいし、設計変更につながれば納入時期はさらに延期されることになる。
今回東レはM90向けの主要部品の生産停止を決定した。鉄製品に比べて25%の重量で10倍超の強度が認められる炭素繊維複合材が、尾翼に加工されていた。今後は三菱重工が加工を担当するようだが、世界シェア1位の東レからの原料供給がなくては加工も出来ない。円滑な供給の窓口を確保するためにも、同製品の開発費用の一部は三菱重工が補償することになりそうだ。
同様の動きが他社に広がると、影響は機体の生産にも及んでくる。いつ量産が始まるかが見通せない製品の生産設備と、スペシャリストを遊ばせておける企業はない。東レの対応はスペースジェットが直面する「飛行」環境を暗示していると言えるだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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