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高校教諭が淡水魚ヤリタナゴの地域固有種喪失を確認 関西学院高等部の研究
ヤリタナゴ。(画像:関西学院大学発表資料より)[写真拡大]
ヤリタナゴはコイの仲間で、準絶滅危惧種に指定されている。関西学院高等部の富永浩史教諭らの研究グループは、この種に7つの地域固有種が残っている事実と、関東地方の地域固有種が既に喪失している事実を突き止めた。
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研究に参加しているのは、富永教諭のほか、長太伸章国立科学博物館特定非常勤研究員、北村淳一三重県総合博物館学芸員、曽田貞滋京都大学大学院理学研究科教授、渡辺勝敏京都大学大学院理学研究科准教授ら。
ヤリタナゴは青森から九州までの川や農業水路などに棲む淡水魚である。生きている淡水の二枚貝のエラの中に卵を産むという珍しい生態を持ち、また産卵期に美しい婚姻色を現すことから、鑑賞用、釣りの対象として人気がある。
タナゴやコイの仲間に限った話ではないが、日本の淡水魚で全国的な分布を持つものにはほとんどの場合多くの地域固有種がいることが一般的である。多くの場合、中部地方の山稜を境に東西で近縁な別種に分かれていたり、より細かく地域ごとに分かれていたりする。
しかし、全国的な調査の結果、ヤリタナゴは中部山地の東西での遺伝的違いはありはするものの予測されるより小さく、何らかの自然移動が起こったものと考えられる。
また、古くからヤリタナゴの生息記録があって自然に分布していたはずの場所と考えられる荒川、霞カ浦、利根川、久慈川などの水系では、近畿地方もしくは東海地方の固有種と同じ遺伝子が確認され、関東地方固有種の生存が確認できなかった。
おそらくはこれは近畿地方や東海地方のヤリタナゴが人為的に移植されたことによるものであり、関東地方の地域固有種は既に消滅してしまっているものと考えられる。
研究の詳細は、Ichthyological Research電子版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
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