高速回転するスーパー渦巻銀河 ダークマターの存在を裏づけか 米研究所

2019年10月23日 16:56

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ハッブル宇宙望遠鏡やスローン・デジタル・スカイ・サーベイがとらえたスーパー渦巻銀河 (c) 上段: NASA, ESA, P. Ogle and J. DePasquale (STScI). 下段: SDSS, P. Ogle and J. DePasquale (STScI)

ハッブル宇宙望遠鏡やスローン・デジタル・スカイ・サーベイがとらえたスーパー渦巻銀河 (c) 上段: NASA, ESA, P. Ogle and J. DePasquale (STScI). 下段: SDSS, P. Ogle and J. DePasquale (STScI)[写真拡大]

 直径10万光年の天の川銀河よりも遥かに大きなスーパー渦巻銀河。宇宙に100個しか存在しない巨大天体は、秒速570キロメートルで回転しているという。銀河内の星やガスだけでは説明のつかない高速回転の原因は、大質量のダークマターだとする研究が、米天文物理学誌Astrophysical Journal Lettersで発表された。

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■規格外のスーパー渦巻銀河

 銀河は形状によって渦巻銀河や楕円銀河などに分類される。棒渦巻銀河に分類される天の川銀河の、20倍以上もの質量をもつ「スーパー渦巻銀河」が存在するという。光学望遠鏡により宇宙全体の地図を作成するプロジェクト「スローン・デジタル・スカイ・サーベイ」や、米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所による天の川銀河外の天体を記録するデータベースを精査することで、超巨大銀河の存在が明らかになった。

 宇宙望遠鏡科学研究所の研究者らから構成されるグループは、南半球で最大の光学望遠鏡である南アフリカ大型望遠鏡を活用し、スーパー渦巻銀河の回転速度を計測した。その結果、秒速210キロメートルで回転する天の川銀河よりも遥かに高速で回転していることが判明した。だが、スーパー渦巻銀河を構成する星やガスの重力の影響だけでは、秒速570キロメートルの回転速度は説明できないという。

■高速回転の原因となるダークマター

 研究グループは、高速回転の原因をスーパー渦巻銀河の周囲を取り巻く巨大な雲や銀河ハロー、ダークマターと推測する。その質量は太陽の約40兆倍にも及び、複数の銀河を内包する程だという。

 銀河の高速回転を説明する理論として、ダークマターの存在を仮定しない修正ニュートン理論が提唱された。だが今回、修正ニュートン理論ですら説明のつかないスーパー渦巻銀河の高速回転が発見されたため、ダークマターの存在を仮定しない理論は不要であることが示唆されるという。

■星形成を阻害するダークマター

 問題は、銀河よりも大質量のダークマターによって星形成が阻止される可能性をどう説明するかだ。銀河同士の衝突に余分なガスが引き込まれることにより高温化するか、あるいは銀河の高速回転によりガス雲の崩壊を困難にするため、星の形成が阻止されると考えられる。だがスーパー渦巻銀河では、太陽の質量の約30倍もの星が毎年誕生しているという。

 研究グループは、スーパー渦巻銀河の問題解決のために追観測を続けるという。2021年に打ち上げられるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡や、広視野赤外線サーベイ望遠鏡(WFIRST)ミッションが問題解決のヒントになるだろうとしている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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