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「人間には不可能」を可能にする探知犬
JR東日本・JR東海・東京メトロの3社がオリンピック・パラリンピックの期間中、東京・品川・上野の主要3駅に「爆発物探知犬」の配置を検討していると伝えられた。世界的なイベントである。警戒は執拗以上になされて然るべきだろう。
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探知犬の活動範囲は広い。武器は研ぎ澄まされたその臭覚。(それぞれの)臭いに関する訓練を施された犬が様々な場面で活躍している。
現に身近でこんな体験をした。6年余り前。「認知症」と診断された親族と、専門施設「グループホーム」入居前の数カ月間同居した。認知症者に最も懸念されるのは、徘徊に伴う悲劇。最近では家の外に出る気配を察知し、事前に予防するシステムも普及している。
フランスベッドの「認知症外出通報システム(玄関を出る姿は目撃できなくても、端末機が家人に通報してくれる)」など優れた商品も登場している。システム商品が整備されていない当家では、4回ほど徘徊という事態に晒された。
最後は地元警察の周辺探索でも発見できず、探知犬の世話になった。身に着けていた洗濯前の下着の臭いを嗅がされた犬は、ハンドラー(探知犬を取り扱う人)の前にお座りした。
「確かに臭いをキャッチした」という意思表示だという。「行け」の一言で走りだした。追いかけた。自宅から200m余りのバスの停留所に至ると犬はぴたりと止まり周辺をクンクンと嗅ぎまわった後、ハンドラーの前にまた座った。
「ここまでは、臭いが確認できた」という報告の為だという。警察官はハンドラーに確認するように「このバス停からバスに乗ったようだ。この停留所から走るバスは3路線。路線沿いの警察に連絡を取り、捜索する以外にない」とした。
自宅に引き上げて1時間余り後、電話が鳴った。(特急)電車で1時間以上先の駅から「切符も何も持っていないが、携帯していた手提げに貴方の名刺があったので連絡した」という次第。何故そんな遠くにと聞いても本人からは要領をえない言葉しか返ってはこなかった。が、最悪の事態は回避しえた。
探知犬は探知する対象物の臭いを嗅ぎ分け、ハンドラーに知らせるように訓練されている。現在、米国を.はじめ世界10余カ国で導入されている。
1960年代にメキシコ政府が、海外から持ち込まれる動植物に「有害物質・菌」などが含まれていないか「農業検疫物」の探知に犬を導入したのが、はじまりとされる。70年代後半に米国農務省が旅行客の手荷物を検査する検索探知犬を国際空港に配置したのを契機に、一気に広がりを見せたという。
検疫探知犬としてはゴールデンレトリバー(大型犬)やビーグル(小型犬)が代表格だが、当初は旅行者と接しない場所での検疫だったことから大型犬が導入された。が、旅行客と接する場所での検疫も必要ということから小型犬も活かされるようになった。
今回の鉄道3社が計画しているという「爆発物探知犬」は大型犬なのか小型犬なのかは、伝わってきていない。原稿を書いている脇で家人が「まさかAIが犬の臭覚を分析し、その武器を収載したロボットが出てきたりはしないだろうか」と呟いた。どうだろう!?(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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