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日本企業の底力 世界の海を救うかもしれない、世界初の2つの技術
地球環境保全は今や、世界規模で対策が急がれている重要な課題であるとともに、技術力のある企業にとっては、新たなビジネスを創出する大きな機会でもある[写真拡大]
地球環境保全は今や、世界規模で対策が急がれている重要な課題であるとともに、技術力のある企業にとっては、新たなビジネスを創出する大きな機会でもある。
環境省が2月に公表した「平成30年12月環境経済観測調査(環境短観)」によると、景気が「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた値、いわゆる業況判断指数・DI は24。一方、日本銀行がほぼ同時期に調査した「全国企業短期経済観測調査(短観)」では、全規模合計・全産業の業況判断DIは16であることから、全産業の状況と比べて環境ビジネスはすこぶる好調と考えられるだろう。
ひとくちに環境ビジネスといっても、その内容は様々だ。代表的なものでは、CO2の排出が少ない電気自動車や、太陽光発電や蓄電池などを利用した再生可能エネルギー分野が思い浮かぶ。そして世界中で最も関心が高く、求められているのが、海洋プラスチック問題を解決する方法だ。
今、世界の海には恐ろしい量のプラスチックが漂っている。その事実が注目されるきっかけとなったのは、2016年にスイスで開催された世界経済フォーラムの年次総会であるダボス会議だ。その席上で、2050年の海では、すべての魚類の重量よりも海中を漂うプラスチックの重量の方が上回ってしまうという衝撃的なデータが発表されたのだ。
プラスチックごみが適切に処理されずに海へと流出し、それが波に打たれたり、紫外線を浴びて劣化し、「マイクロプラスチック」と呼ばれる直径5ミリ以下の微粒子になる。これが魚などの体内に取り込まれ、最終的に私たちの食卓に並ぶとどうなるかは言わずもがなだ。しかも、このマイクロプラスチックには有害物質を吸着しやすい性質があるとも言われている。このまま汚染が進めば、生態系や私たちの健康に被害が及ぶのは避けられないだろう。
しかし、一度海に流出してしまうと、それを回収するのは至難の業。そこで、これからの対策として重要視されているのが「脱プラスチック」だ。プラスチックの代替品などを利用することで、プラスチックごみの排出量そのものを激減させようという考え方だ。
今年6月に開催されたG20 大阪サミットや関係閣僚会合でも、この問題は大きく取り上げられ、解決策が話し合われたとともに、会場に併設された企業ブースなどでは、海洋プラスチック問題解決に役立つ日本の技術が紹介されて話題を呼んだ。その中でも抜群の存在感を示したのが、木造注文住宅メーカーのアキュラホームが独自に開発した「木のストロー」と、化学メーカーのカネカ〈4118〉による植物由来の原料から作られた「生分解性プラスチック」だ。
アキュラホームの「木のストロー」は、木造住宅建築に用いるカンナ削りの技法を応用して作られ、世界で初めて量産に成功したものだ。G20のプレスセンターなどで配られると、プラスチック問題解決はもとより、日本独特の繊細な技術と美しさに感嘆の声が上がっていた。あまりの人気ぶりに、政府もその後、内閣府政府広報室が政府関係者や国際機関、海外投資家などに向けて発行している冊子「We Are Tomodachi」の中でも大々的に紹介するなど力を入れている。
また、カネカが開発に20年近くの年月をかけた生分解性プラスチック「PHBH」も、こちらもやはり世界初。G20の会場で実際にごみ袋として使用されたり、「G20イノベーション展」ではネームプレートにも活用されている。カネカのPHBHが優れているのは、自然の土壌はもちろん、海水中でも生分解される点だ。これまでにも、ポリ乳酸などの生分解性プラスチックは存在したが、処理施設内の50~60℃という高温環境でなければ生分解されなかった。しかも、従来の石油由来のプラスチックと遜色のない質感と、幅広い用途への加工が可能。世界中でこの技術が活用される日もそう遠くないだろう。
メイドインジャパンは何も、自動車や電化製品だけのものではない。日本企業の高度な技術力と創意工夫こそが、日本的ビジネスの真骨頂だ。そこから生み出されたものが、世界の海を救うかもしれない。(編集担当:藤原伊織)
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