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輸入頼みの高価な特殊ガス「重水素」の低コストな製造法 阪大の研究
ギ酸と重水から重水素ガスを作りわける触媒技術。(画像:大阪大学発表資料より)[写真拡大]
従来、重水素の製造には多くのエネルギーが必要だった。そのため高額であり、またほとんどを輸入に頼っていたのだが、今回、大阪大学大学院工学研究科の森浩亮准教授、山下弘巳教授らの研究グループは、ギ酸を分解して重水素を選択的に製造する方法を開発した。
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重水素は、通常の水素(軽水素)が陽子一つの原子核を持つのに対し、陽子一つと中性子一つからなる水素の安定同位体である(なお、余談であるが中性子が二つあるものはトリチウムである)。
用途としては、化学・生物学の実験研究用試薬や、半導体、光ファイバーの製造工程などで用いられる。核融合発電の燃料の有力な候補とも目されている。
地球上の自然界にはほとんど存在しないため、軽水素よりも沸点が1度高いことを利用した分別蒸留法と呼ばれる手法や、交換反応法と呼ばれる手法などで製造されているのだが、いずれも大きなエネルギーコストがかかる。そこで、触媒を用いた手法による簡便な合成法が期待されていた。
一方、ギ酸は工業的な大量生産が可能で、かつ安価、安全(燃えない、爆発しない、毒性があまりない)なマテリアルである。水素を多く貯蔵していることから次世代のエネルギーキャリアとして注目されているのだが、これを重水の中でパラジウムと銀の合金ナノ粒子を担持した触媒を用いて分解すると、80%ほどという高い効率で重水素が生成されることが明らかになった。
今回開発された触媒は、それ自体も調整が簡便であり、安定性が高く分離回収も容易な個体触媒であるため、実用化に向いているといえる。よって、今後世界的に需要の拡大していく重水素の製造に対応する低コスト製造法として、普及が期待されるものである。
研究の詳細は、英国の科学誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
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