iPS細胞を用いた家族性地中海熱の新しい診断法を開発 京大の研究

2019年9月24日 18:27

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研究の概要図。(画像:京都大学発表資料より)

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 家族性地中海熱は遺伝性の難病である。従って遺伝子変異があるかどうかで診断が行われるのだが、今回、iPS細胞を利用することで、より正確に家族性地中海熱の診断を行うことができる新しい診断法が開発された。

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 京都大学の西小森隆太医学研究科准教授(現:久留米大学准教授)、八角高裕同准教授、田中孝之医学部附属病院医員、芝剛医学研究科博士課程学生(現:天理よろづ相談所病院)らのグループによる研究である。

 家族性地中海熱は、名前の通り地中海沿岸に多い疾患なのだが、日本にも500名ほどの患者がいると推定されている。病態の特徴は、発熱と腹部の疼痛・関節の腫れなどの症状が、発作的に繰り返されるというものだ。治療の方法はあり、コルヒチンというアルカロイドが唯一の有効な薬であるとされている。

 従来の研究では、MEFVと呼ばれる遺伝子の異常が、炎症に関連するパイリンというタンパク質に異常をもたらすことが原因と考えられており、その遺伝子に関する検査が診断に用いられていた。ただ、病気との関連が不明な遺伝子変異が見つかることもあり、その変異が本当に発熱の原因であるのかどうかの判断が困難だった。

 今回、研究グループは、MEFVの異常を持つ患者のマクロファージが、遺伝子変異のないマクロファージよりも発熱物質を多く分泌することを明らかにした。正常iPS細胞に遺伝子変異を導入してマクロファージに分化させ、発熱物質を多く分泌するかどうか検査すると、その遺伝子変異が家族性地中海熱の原因かどうかを判定できる、というのが今回開発された診断法の要諦である。

 ちなみに、コルヒチンはこのマクロファージからの発熱物質の分泌を抑制することで、その薬効を生じさせているということも明らかになったという。

 研究の詳細は、Journal of Allergy and Clinical Immunology誌に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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