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前立腺肥大症治療薬がパーキンソン病の進行を遅らせる可能性 国際共同研究
前立腺肥大症治療に広く使われているテラゾシンが、パーキンソン病の症状進行を遅らせることが明らかにされた。この発表は、アイオワ大学、中国の首都医科大学、北京大学、北京航空航天大学、スペインのバルセロナ大学、イタリアのブレシア大学の国際共同研究チームが行ったものである。
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パーキンソン病は、神経線維が変性することで発症する加齢性の神経疾患で、運動機能障害を引き起こす。人口の高齢化に伴い患者数の増加が著しいが、この病気の進行を抑える治療法はまだ開発されておらず、対症療法のみが行われている。
一見、何の関係もなさそうに思われる前立腺肥大症とパーキンソン病。その謎を解く鍵は、まず、首都医科大学のLiu博士らによる、前立腺肥大症治療薬テラゾシンの細胞保護作用の研究から始まった。彼らは、テラゾシンが、PGK1という酵素の活性を高めて、エネルギー物質であるATPを増やして細胞死を防ぐことを突き止めた。
パーキンソン病の特徴は、細胞エネルギー減少とATPレベルの低下による神経細胞の細胞死である。加齢とともに減少する細胞エネルギー。テラゾシンによるパーキンソン病治療の可能性が浮かび上がってきた。
そこで、パーキンソン病のハエ、ラット、マウスにテラゾシンを投与する動物実験が行われた。その結果、脳内のATPレベルの上昇、ドーパミンレベルの回復、細胞変性抑制が確認され、運動障害の改善も明らかになった。さらに、遺伝性のパーキンソン病患者2名に対してテラゾシンを投与したところ、異常な神経線維の割合が減少した。
これらの実験データとともに、複数のパーキンソン病のデータベースが解析された。解析では、テラゾシン服用パーキンソン病患者(最大で2880人のパーキンソン病患者を含む)と、同じ前立腺肥大症治療薬であるタムスロシン服用パーキンソン病患者との比較が行われた。
その結果、テラゾシン服用患者のみで、運動症状、非運動症状、合併症の全ての進行が抑制されていることが明らかになった。タムスロシンは、テラゾシンが持つPGK1活性に関係する部位を持っていないのだ。
これらの実験結果から、テラゾシンがPGK1活性を高めて神経変性を抑え、パーキンソン病の発症を抑えるか遅らせる可能性のあることが示唆された。
現在、フェーズ1の臨床試験が計画されている。テラゾシンは治療薬として広く使われているため、安全性については、既に多くのデータが蓄積しているという大きな利点がある。
この研究の詳細は、米国の科学雑誌「The Journal of Clinical Investigation」の9月16日号に掲載されている。(記事:仲村晶・記事一覧を見る)
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