乃木坂46 井上小百合への高評価がもたらす未來

2019年9月17日 12:08

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 菅野美穂・中谷美紀(桜っ子クラブさくら組)、永作博美(ribbon)、篠原涼子(東京パフォーマンスドール)、松井玲奈(SKE)、元アイドルであった女性が、女優として高い評価を受けているケースは多い。

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 乃木坂46からも、能條愛未や若月佑美、樋口日奈、生駒里奈、伊藤純奈など、多くのメンバーが舞台で活躍し、深川麻衣や伊藤万理華など、映像作品でも存在感を放っている。だが今回、紹介したい……いや、しなければならない、井上小百合は、現在公演中の『ミュージカルlittle wemen若草物語』において、前代未聞の高評価が話題となり、演劇関係者を瞠目させているという。

 これまでアイドルから女優に転身してブレイクした人たちは、その多くが、グループの卒業後、あるいは解散後に、しばらく勉強期間があって成功している。前田敦子のように海外留学してくる子もいる。

 むろん、アイドル時代から舞台に出ている子もいる。だがその場合、どうしてもファンが見に行くことが多く、ある意味ホーム感が出てくるため、評判が高くても「女優」としての評価なのか、ファンゆえの身内目線なのか……少なくとも「アイドルのあの子がこんな演技を…」と、少々下駄をはかせた評価になってしまう部分は否めなかったのが事実だ。

 乃木坂は初期から、女優という活動への後押しをするというコンセプトがあるため、プリンシパルや「じょしらく」(乃木坂メンバーだけの参加)、「すべての犬は天国に行く」(乃木坂メンバー中心)といった舞台から、単独での舞台出演のオファーを受けるというステップをしっかり積ませようとしている。その姿勢に記者は好感を持っているのだが(例外は多々あるが)、今回の井上小百合の高評価は、まさにこれまでの乃木坂の路線で、最も理想的な結果を出したのではないかと考えている。

 つまり、アイドル活動と本格女優としての活動を、並行して同時に行って成功しつつある稀有な例として、今回の舞台は記憶に残る作品になったと思うのだ。

 若草物語は、世界中でよく知られている作品で、これまで世界各国で舞台化もされ、映像化もされている。今回の『ミュージカルlittle wemen若草物語』も、2005年にブロードウェイで公開された作品がアレンジされたもので、ロングラン上演された名作だ。

 出演者も、宝塚出身の朝夏まなと、綾乃かなみ、ミュージカルには欠かせない名優村井國夫など、錚々たるメンバーで、一般の目の肥えたミュージカルファン向けにしっかりとした実力を持つメンバーだけで構成されている。

 その中で、「ベス(井上が演じたマーチ家の三女)の声が素晴らしかった」「デュエットがよかった」「たたずまいから発生まで、本当の天使だった」などなど、彼女への評価がTwitterやSNSで多くのファンから語られ、以前共演した八嶋智人までが絶賛しているのである。

 ネタバレを防ぐため詳しくは書けないが、病弱でおとなしく、そして優しい少女であるベスの、内に秘めた強さが徐々に表に出ていく様子は、観客をぐいぐい引き込んでいく迫力があった。

 そして、ローレンスを演じる村井國夫とのデュエットでは、かわいく、そして老紳士であるローレンスを包み込むような慈愛に満ちた眼差しが、なんともいえない幸福感を漂わせていたのだ。

 そしてもう一つ強調しておきたいのが、乃木坂46とそのファンたちの存在だ。

 井上は、この作品のため、今年の全国ツアーを欠席(神宮最終日のみ登場)しているのだが、そのことが発表されたとき、「アイドル活動を優先しろ」というどのアイドルにもありがちな文句がほとんどなかった。

 これは、今までも生田絵梨花や白石麻衣でも、スケジュール都合でのライブ欠席はありファンが慣れているというのもあるが、乃木坂が舞台の仕事をライブと同じぐらい重視しているということが、ファンにも理解されているということであろう。

 こうして、ファン、スタッフ、メンバーの間に信頼関係が感じられる雰囲気が、乃木坂メンバーの女優への道を踏み固めているのではないだろうか?(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る

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