首都圏で拡充する食品ECの実態を考える

2019年9月3日 18:11

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 私には俄かに信じがたいが、食品もネットで購入する時代に突入したらしい。正確を期すと「首都圏に照準を合わせた食品系ECが活発化している」と、週刊日本ネット産業新聞の編集局長:樋口裕伸氏から聞いた。具体的な事例を幾つか教えてもらった。「へぇー」と驚いたものである。

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 例えば、料理のレシピの提供で知られる「クックパッド」。昨年9月に食品ECサイト「クックパッドマート」を開設した。鮮魚や精肉など生鮮食品を商う小売店や農家の直売所、更には卸売市場の店舗などが出店。ネッでト注文した商品は所定のドラッグストアやクリニーング屋、駅直結の複合施設等で受け取れる。配送は、発注者の自宅から10-20㎞圏内の出店舗と契約するルート配送会社が担う。

 樋口氏は「クックパッドの強みはなんと言ってもレシピ。レシピを前面に押し出し出店舗を着実に増やしており、年内に100店舗体制を目指している。サイトを活用する顧客の多くが20-40歳代の共働き世帯。週末に1-2回使うケースが多い。クックパッドでは(ヘビーユーザーの)月に1万円の購入を目標にしている」と説明してくれた。

 妙に頷けたのは、東急電鉄の食品EC参入。今年1月に「サルースオンラインマーケット」を立ち上げた。これまでにもやってきた「ネットスーパー」や「東急百貨店の通販事業」をベースに、現在では沿線の約170店舗が出店している。配送は東急ベル(ホームコンビニエンスサービス)のスタッフが担当する。

 鉄道各社は少子化時代への備えとして「人が集まる=鉄道が利用される」沿線づくり、「沿線住民の満足度」を高める施策に取り組んでいる。東急の取り組みの成功は、同業他社の斯界への進出を促すことが見込まれる。

 意外な感を覚えつつも「なるほど」とも感じたのが、百貨店:高島屋の「ローズキッチン」。軸足を外商担当の顧客層の掘り起こしから始めた。外商担当の顧客=特別顧客。そんな「くすぐり」から展開を進めている。

 具体的には外商顧客だけが購入できる商品を、バイヤーが毎月企画(年間10企画以上)している。現在売り上げの4割方を外商顧客で占めているが、カタログ通販顧客や百貨店のカードホルダー向けダイレクトメールで裾野を広げている。そして「2020年2月期のWeb販売比率を高める目的で、Web先行受注を実施。そのために今秋に向けWebサイトの刷新を進めている」(樋口氏)という。

 周知の通り、地方での「買い物難民」が指摘されている。一方、東京(首都)エリアの買い物の便利さは、ネット販売により「食品」にまで及ぼうとしている。食品ECは首都と地方の生活環境を更に差別化するのだろうか!?(記事:千葉明・記事一覧を見る

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