関連記事
東京都武蔵野市の地域共助介護予防施策に注目したい
東京商工リサーチによると、今年上半期の介護事業者の倒産件数は55件。介護保険制度が施行された2000年以降、上半期としては過去最高になった。年間を通しても過去最高件数(これまでは17年の111件)に達する可能性が否定しきれないという。東京商工リサーチではそうした懸念の裏付けとして、以下の様な点を指摘している。
【こちらも】SOMPOケアは介護業界の「改善」を牽引できるか
「55件のうち従業員数が10人未満の小規模業者が8割を超えている」。「中小訪問介護業者の倒産が目立つ」。そしてその背景を「ヘルパーを募集しても人が集まらない。人手不足倒産の側面が強い」としている。
私は財経新聞でこれまでに機にふれ折にふれて、「業界の健全化には大手資本による再編は不可欠な流れ」としてきた。改めて論の根拠を記す機会を作りたい。
介護福祉業界の専門週刊紙「高齢者住宅新聞」の8月7・14日夏季特大号は斯界の業者別施設運営数ランキング:上位500社を掲載しているが、巻頭の見出しを「M&Aで上位(業者)に変化」としている。
この傾向は今後一層強まろう。言葉を選ばずに言えば「裏返せば、大手資本が食指を動かさない中小零細業者の破綻は今後も続く懸念が強い」。非難の誹りを覚悟で記せば、斯界はいま介護保険法施行後の不可避な最大の分岐点を迎えていると捉える。
東京商工リサーチの調査結果を知った直後、こんな事実を知った。高齢者はある歳を迎えたら全員が即「介護(施設)」の利用者になるわけではない。地域の共助で「介護予防」と取り組んでいる自治体がある。東京都武蔵野市。
「テンミリオンハウス、〇〇さんち」といった名称で民家がエリアの高齢者に開放されている。開放民家第1号は、約20年前にオープンしている。「テンミリオン=1000万円」。武蔵野市が運営者に年間に出す補助金1000万円に由来している。NPO法人や住民グループが運営に当たっているが、総じてこんな枠組みのハウスだ。
*利用料は1日100円。昼食費500円。
*高齢者が馴染みやすい編み物や書道等々のプログラムが組まれている。月に1回くらいの割合でイベントが催されている。
いわば高齢者を「介護が必要な状況をくい止める」ための施策だ。武蔵野市の高齢者支援課に聞いた。そして、こんな実態を知った。
「介護保険法の施行で、例えば市内のデイサービス通所者の約3割が対象外になることが分かった。それを契機に検討し立ち上げたもの」
「市内にいま8カ所ある。それぞれが工夫を凝らして運営している。ミニデイサービス的な通所施設を特色にしているところもあるし、ショートステイの様な機能を果たしているところもある。認知症予防に注力しているテンミリオンハウスもある」
「利用者は原則、武蔵野市民だがハウスにより独特の要件のところもある。市のホームページに8カ所が掲載されているので、詳細は個々に尋ねて欲しい」
今後、自治体のこうした展開が増すことを期待したい。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
スポンサードリンク