2号機が打ち上げ間近のEDRS 宇宙通信事情を劇的に改善するハイテク衛星

2019年8月1日 13:20

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 EDRS(European Data Relay System)とは、欧州宇宙機関(ESA)と民間会社であるエアバス社による共同プロジェクトで、人工衛星から発せられた宇宙空間からの大量データを中継し、高速で伝送するシステムを指す。

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 人工衛星からデータを直接地上に伝送する場合と、EDRSを中継局として用いた場合とでは、データ伝送時間に最大90分の差が生じるという。EDRSが人工衛星からの大量のデータを高速で伝送できる理由は、周波数の高い光レーザー通信システムを採用しているからで、地球観測衛星が測定した膨大なデータや、国際宇宙ステーションからのデータをほぼリアルタイムで送受信できる性能を持つ。

 地上でもインターネットの高速回線として光ファイバーが用いられているが、光も電磁波の一種で、通常我々が電波として認識しているモノよりも周波数が高い。電磁波は周波数が高いほどより多くの情報を伝送できるため、その特性を生かして光が通信媒体として採用されるのである。

 EDRS-Aと呼ばれる衛星第1号機は、すでに2016年1月に打ち上げられ、2017年10月25日から運用が開始されている。今回発射が予定されている衛星は、EDRS-Cと呼ばれる第2号機で、当初2018年の打ち上げが予定されていたが、これまで打ち上げが延期となっていた。7月30日のESAの発表では、8月6日に打ち上げられる予定で、衛星本体のロケットへの組み込みを完了したとのことである。

 EDRSの具体的な用途として、準リアルタイムでの人工衛星からの船舶検出があげられる。EDRSでは人工衛星による画像撮影から地上へのデータ伝送、船舶の検出までが18分で可能になるという。いっぽうEDRSを用いない場合、これらの一連のプロセスには1時間以上を要する。

 これによって、例えば、海洋上でのタンカーの原油流出事故発生時の迅速な位置特定と被害状況の把握や、不法移民船の発見とそれに対する迅速な対応、海賊行為の発見と迅速な取り締まりなど、急速な状況展開に対応することを必要としている分野での活躍が期待されている。

 今回のEDRS-Cの打ち上げで2つの衛星を宇宙空間に滞在させることになり、高速受信できる地球局のエリアが2倍に拡大されることになる。民間での活用範囲の拡大が大いに期待されるところである。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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