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ルノーとFCAの統合により、単純合計した売上高が約1700億ユーロ(約20兆8600億円)、営業利益は100億ユーロとしている。統合完了までの期限は明示されていないが、統合効果は年間50億ユーロ(約6100億円)を見込んでいる。
【前回は】日産とルノーに割って入るFCA、ルノーが仕掛けた日産抱きつき作戦か? (3-1)
協議開始の発表をしている段階であり、聞き心地の良い内容になっているのは当然だ。構想通りに統合が実現すると、世界での販売台数は合計で約870万台に上り、一躍世界第3位の自動車メーカーに生まれ変わる。
気の早い向きは、日産、三菱自動車とルノーで構成するアランアンスとFCAの18年の販売実績を加算して1482万台を売上げるスーパー自動車メーカーが誕生すると囃し立てている。同時期の1位であるフォルクスワーゲンが1059万台、2位のトヨタが1047万台であることを考えると、寄り合い所帯ではあるものの飛び抜けた規模であることは間違いない。
今までルノーやフランス政府から寄せられる統合への風圧を、「今はその時期ではない」とやり過ごしてきた日産の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)にとっても予想外の展開となった。ルノー陣営から具体的な要求が出てくる前に、6月末の株主総会へ向けた取締役候補の選抜を行い、先手・先手の対応を心掛けてきた日産に、本件の情報がもたらされたのは23日前後のようだ。
日産のゴーン前会長が「ルノーと日産の不可逆的な関係」構築について、フランス政府に約束したと見られる時期から1年、ゴーン被告となってからではまだ半年しか経過していない。ゴーン被告が会長だった時期にFCAとの交渉をうかがわせる発言はしていないため、端緒は最長でも半年以内と思われる。日産がルノー・フランス政府連合との熾烈な神経戦を戦っている最中に、ルノーはFCAと交渉を始めていたことになる。
日産にとって、ルノーとの今後の関係を構築する上でネックとなっていたのが、両社のいびつな株式保有状況である。ルノーは日産の株式の43%を保有しているが、日産はルノーの株式の15%を保有しているに過ぎず議決権も与えられていない。正面から勝負を挑んでも歯が立たないことは明白だから、日産は勇み足のないように慎重な対応を続けながら間合いを計っていた。そしてルノーやフランス政府が、敢えて日産に対等な関係を許容する合理性はどこにも存在しなかったから、力ずくの統合劇さえ想定されていた。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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