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いつまでも変わらぬローテク「ワイパー」 EV・自動運転などハイテクカーの時代なのに
自動車の「ワイパーは進歩していない」などと言えば、努力してきた技術者に怒られそうだが、これほど「ハイテク」になった時代に、未だに「ゴムで擦っている」のだ。エアーで吹き飛ばす、シリコン液、超音波で滑らすなど、他にも方法があるようにも思うのだが。
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もう50年以上前のことだが、鎌倉を走る「江ノ電のタンコロ」と言えば単車両で連結はしていなかった。また驚くことに、運転席の前面窓ガラスにはワイパーがなかったのだ。江ノ電は学校に通っていた時の足なので、当然雨の日でも乗らなければならないのだが、運転手の後ろから観察していると、かなり視界が悪くなっていた。これがもし電車でなく自動車であったら、とても走れなかったであろうと今でも思う。
しかしある時、念願のワイパーが動いていることに気付いた。音がするのだ。「シュー、パタン、シュー」とリズミカルに動いていた。これは感動ものだった。視界が不足するようなことはまずないであろうと思えた。だが残念なことに、しばらくすると止まってしまうのが分かった。「どうして?」とよく見ると、どうやら空気シリンダーでブレードを左右に振っているようだった。止まってしまうと運転手が、小さなレバーを振りたい方向に動かしてやると、またブレードが動き出した。そしてまた、停止してしまうのだ。
それでも視界の良さは、以前と比べものにならなかった。どうして止まってしまうのか?「じ~っと」観察していると、空圧シリンダーのピストンの位置が、空気の取り入れ口の中間で止まることが分かった。惜しい仕掛けだが、シンプルで面白い仕掛けだった。電車で使っているコンプレッサーから空気圧を取り出して、シリンダーを動かしていたのだ。
その後大学を出て、国産旅客機YS-11の日本航空機株式会社に入社すると、すぐに名古屋の三菱重工で社員教育を受けた。その中で、YS-11の開発苦労話をいくつか聞かせてもらった。皆さんは、コックピットの前面窓の角度がかなり急なのに、気付いているだろうか。あれはパイロットの頭上の操作パネル設計において、スイッチを取り付けるスペースを確保するのを忘れていたからだそうだ。それで天井外板とコックピット天井内張の隙間を確保するため、全面風防の角度を急にせざるを得なかったのだ。
なぜか「おでこちゃん」と呼びたくなる外観になったのだが、そのための深刻な影響は、雨の水滴を角度が急でうまく流せなくなったことだ。飛行機にもワイパーがあって、流れが悪くなると視界が悪くなるのは当然だ。そこで当時、アメリカのボーイングが特許を持っていたシリコンを散布する方法で、解決することに成功したという。現在クルマのウィンドウガラスにもよく使用されているシリコンと同じ原理だ。
コストの関係なのであろうが、現代の自動車のワイパーは、ゴムのブレードで排水する方式ではなく、空気の膜などで流す方法を考えられないものだろうか?ハイテクになっている昨今、自動運転車でブレードが動いている様を見たくない気もする。2013年には、マクラーレンが超音波ワイパーを開発していると伝えられたが、まだ実用化されてはいない。いよいよハイテクのワイパー登場なるか?(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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