名車概論/ 「人とくるまのテクノロジー展」でとっても気になった「ダイハツP-5」

2019年5月27日 09:46

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記事提供元:エコノミックニュース

第5回日本GPで、トヨタ7や日産R381、ポルシェカレラ10などと渡り合った「ダイハツP-5」、その排気量は1.3リッター、全長×全幅×全高3850×1650×990mm、重量510kgの小さなレーシングカーで「ハイパーコンパクト」と呼ばれた

第5回日本GPで、トヨタ7や日産R381、ポルシェカレラ10などと渡り合った「ダイハツP-5」、その排気量は1.3リッター、全長×全幅×全高3850×1650×990mm、重量510kgの小さなレーシングカーで「ハイパーコンパクト」と呼ばれた[写真拡大]

 神奈川県・横浜のパシフィコ横浜で5月22日、自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2019 横浜」が開幕し、ダイハツが異彩を放っていた。最新のクルマに関する技術展であるはずのブースに、きれいにレストアされた小さなレーシングカーが置かれていたのだ。気になるモデルは1968年の日本グランプリ「Iクラス」優勝車である「DAIHATSU P-5」だったのだ。P5は総合でも10位に入る活躍で観客を沸かせたという。

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 その日本GPで総合優勝したのは、5.5リッターV8エンジンを積んだ「日産R381」だったが、P-5はたった1.3リッターのNAエンジンだった。P-5は、ダイハツ伝説の一台だ。

 P-5は本格レーシングカーで、鋼管スペースフレームのシャシーに流麗なFRPボディを載せた当時最強と言われたレーサー、ポルシェ906(カレラ6)にも似たシルエットの持ち主だ。リア・ミドシップに搭載したエンジンは前述のとおりキャパシティ1.3リッター、直列4気筒DOHC16バルブエンジンだった。これは当時ダイハツが販売していた小型車コンパーノの1リッターエンジンをベースに開発したツインカム4バルブのレーシングエンジンだった。

 R92A型と呼ばれた最高出力130psのダイハツオリジナルDOHCエンジンを搭載したP-5は、1967年第4回日本GPに出場するも、エンジントラブルで予選落ち。

 エンジンをR92B型とし、翌1968年の第5回日本GPに挑戦する。R92B型エンジンは排気量などに変化はないが、キャブレターを三國ソレックス製50PHHに換装、最高出力140ps/8000rpm、最大トルク13.0kg.m/7000rpmのスペックを得て、P-5の最高速度は240㎞/hに達したという。

 レースでは、トヨタ7、日産R381、ポルシェカレラ10といった大排気量勢を相手に、黄色に赤の小さなレーシングカー「P-5」が大健闘。富士スピードウェイに詰めかけた観衆は小さなレーシンカーに大声援を送ったという。「ハイパーコンパクト」と呼ばれたP-5は軽量で空力特性に優れ、燃費が良かったことが好成績に繋がった。この思想は現在でも、ダイハツのクルマづくりに脈々と受け継がれている。

 今回展示されたP-5はダイハツの伊丹倉庫に眠っていた車両をレストアしたもの。残念ながらエンジンが残存しておらず、ボディだけのレストアが進められていたが、昨年、京都府綾部市の山本自動車が所有していたエンジンを譲り受け、ダイハツ技術研究会が、完全レストアにこぎつけたモデルだ。

 レストアに参加した約35名の社員にとって、本来の仕事ではなく、就業時間を終えてからの活動で、困難も多かったという。が、ダイハツの伝説そしてチャレンジスピリットを学びたいという思いで、ベテランから若手までが一緒になってレストアすることによってR92B型エンジンと向き合い、充実の2カ月間をおくったという。

 自動車にまつわるテクノロジーはいま、史上最大の変革期を迎えている。確かに最先端のAI技術やコネクティッド、自動運転、電動化などで新技術の開発・導入は必須項目だ。が、しかし、このダイハツP-5のレストレーションのような手作業による技術の伝承も欠くべからざる要素といえるだろう。(編集担当:吉田恒)

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