女性が活躍する企業、花王の礎

2019年5月20日 16:08

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 5月18日のNIKKEI STYLE電子版で「女性管理職27% 花王は無理させぬ自由が活躍のカギ」と題する記事を読んだ。日本経済新聞と日経ウーマンによる2019年の「女性が活躍する会社ベスト100」で、花王が初の1位となった。その理由が語られ、現職の女性管理職が実名で登場しその「現実」を咀嚼する記事だった。

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 記事を読み進んでいくうちに、1人の人物の名前(顔は漠然としか記憶にないが)を思い出した。「花王中興の祖」とされる故丸田芳郎氏(1914年―2006年)である。バブル期の頃と記憶するが、2度ほど取材の機会を得た。未だに印象に残っている言葉が3つある。

 1つは「トップが迷っていたら会社はなりゆかない」。丸田氏は前任社長、伊藤英三氏の突然の死去により、1971年10月に社長に就任した。米国視察で合成洗剤に出会った丸田氏は、上役を口説き続け「石鹸の花王」に新たな「顔」を植え付けた。ニベアとの合弁で花王に、「化粧品」というカテゴリーにも足を踏み入れさせた。等々の実績を積み重ねてきた自信がそうさせたのだろう。

 副社長時代には「確信」したら最後、伊藤社長に対しても1歩も譲らず丁々発止を繰り広げた。が、伊藤氏の突然の死で当初は「副社長と社長ではかくも違うものか」と数日間、気鬱になった。だが「結局、尻をまくることにした。トップが迷っていたら会社はなりゆかないから」と語ってくれたのである。

 1つは「何事も上が率先垂範しなくては駄目」。夏休みシーズ直前のタイミングに取材した折りだった。「丸田さんはどんな夏休みを過ごされる予定ですか」と聞くと、返ってきた答えはこうだった。「どうしようかアレコレ考えているところ。休む日は会社でいの一番に決め、秘書室から人事部に伝えてあるけど、どう過ごすかは決まっていない。僕がまず日にちを決めなくては役員が、そしてその下の部長職、現場の社員が申請しづらい。とにかく何事も上の者が率先垂範じゃなくては駄目」としたのである。

 1つは「女性社員の知見なくしては、うちは成り立たない会社」。「考えるまでもなく、石鹸・洗剤・化粧品は女性のマター。彼女たちの意向にそぐわない商品は売れない。具体的な数まで把握していないが、うちは女性管理職が多いはず」と口にした。

 企業の社風は一朝一夕に育まれるものではない。トップに立つ人物が礎をきづき、脈々と受け継がれて初めて培養されるもの。NIKKEI STYLE電子版の記事から改めて故丸田氏が「花王中興の祖」とされることを感じ取った。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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