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物言う株主:村上世彰氏の「投資資金貸します」を考える
物言う株主の代名詞の感さえする村上世彰(よしあき)氏の名前が、またぞろ露出度を高めている。村上氏も今年で還暦。メディアに登場する写真を見ると、髪の毛・髭に白いものが目立ち始めた。
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私が初めて村上氏を取材したのはかれこれ30年近くも前。「物言う株主」としてその名が問沙汰され始めた時期だった。フリーランスの身だった私は、社会人の入り口となった日本短波放送(現、日経ラジオ社)から週1の「サテライト放送」を委託されていた。村上氏はゲスト出演(ノーギャラ)の依頼を引き受けてくれた。
サテライトの現場は茅場町の交差点角にあった某証券会社。当日、見物人が鈴なり状態だったことを今でも記憶している。「株式投資は悪なのでしょうか」という一言が、いまなお頭に残っている。
以来、数回の取材を受けてもらった。だがその後、疎遠に。再度接した?のは、ニッポン放送株に絡み有罪判決を受けた2006年上梓の「生涯投資家」(文春e―book)だった。
その後村上ファンドの名は表舞台から消えたが、グループ企業を介して「生涯投資家」活動は続いていた。最近で言えば、旧村上ファンド系の不動産会社(南青山不動産)がTOBの実施を宣言した1件。廣済堂は米ファンドと経営陣によるMBOを進めている最中。対して「既存株主に対して十分な株主価値向上の機会が提供されていない」と公開株式買付に打って出たのだ。私は廣済堂事情を「創業家株主や監査役に反対意見を明らかにしている」くらいしか知らない。従い、論評は避ける。
が、このニュースより興味を覚えたのが、村上氏が中高生を対象に株式投資資金を貸すという行動を起こしたといいう事実だった。審査を経て「OK」となった申込人は指定のネット証券で口座を開設する。初期費用3万円が供給される。投資状況を報告すると供給額は最大10万円となる。資金の提供主は村上財団。1年後供給資金が増えていればその増加分は中高生が受け取る。損失分は財団が補填する。そんな枠組み。
1月から募集が始まった。村上氏は3月中盤段階で「子供に(株式)投資をさせてよいものかどうか迷う親が多いようで、思ったより反響は少ない。だがいずれ子供たちの中からスターの投資家が現れれば、社会は変わるはずだ」(朝日新聞デジタル)と語ったという。
この話を聞いて、我が娘が言ったことを思い出した。彼女は高校・専門学校の6年間、親の懐具合などは無視しオーストラリアに遊学した。高校時代に「成果を競う株式模擬投資が定期的にあった。みんな真剣に企業を研究し(模擬)投資をしていた。私も1年間で2割近く儲かったわ」とし、帰国後「お父さん私に投資しない」と迫られた。四十路を過ぎた娘はご亭主殿と、NISAを活用している。
財経新聞で「株式投資は博打などではない」という連載を書かせてもらった。村上氏の「投資資金貸します」という報に接しいまつくづく思う。日本証券業協会こそが、活動の先導役になるべきだと。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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