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ボーイング797開発スタートか? (2) Y-11の怨念が続く757、767の後継機か?
今回、開発が検討されているボーイング797は、757、767の後継として考えられているもので、787と737の中間に位置する大きさだ。757、767と言えば、日本の国産旅客機、日本航空機製造のYS-11の後継として計画されていたY-X,Y-XXのことと言っても良いだろう。
【前回は】ボーイング797開発スタートか? (1) いつの時代も旅客機業界の命運がかかる決断
50年ほど前、YS-11が180機ほどで生産中止になろうとしていた時、ボーイング社は、旅客機開発のリスクを軽減するため、日本政府に圧力をかけ、ボーイング社の次期計画に下請けとして吸収し、日本の予算を取り込もうとしていた。ロッキード事件が起きていたころの日本とアメリカ政府の力関係の構図だ。
こういったことは、ロッキード事件のような軍用機に限らず、旅客機の分野でもあからさまに行われており、さらには宇宙開発のロケット分野にも及んでいた。そのため日本の航空機産業は、戦後の空白期に戻されてしまい、今現在、三菱・MRJの苦労を体験しなければならない立ち遅れとなって日本にのしかかっている。
ロッキード事件は、一政治家の「故田中角栄」の事件ではなく、日本の戦後が続く「日本国家の体質」とでも言うべき出来事なのだ。今も続く沖縄の問題など日本国民が背負っている「敗戦」の重荷でもある。
日本のロケット業界は、一時期、アメリカのICBMを利用させられたが、独自の開発を貫き、現在の世界的地位を勝ち得てきている。日本の軍用機、旅客機も独立できる実力を持ちながら、中国などに後れを取らされていることは、経済規模にとっても残念なことだ。航空機産業は「知識集約型産業」であるだけに、後進国の追従は困難で、日本の将来にかけての生き残りをかけた産業だった。IT産業よりも奥の深い、簡単には真似のできない経済規模の大きな産業なのだ。
奇しくも、現在開発が検討されているボーイング797が、50年前のY-X、Y-XX計画の757,767機の後継と聞くと、これで戦後の日本の航空機産業の区切りでもあると感じる。当時、私がいた日本航空機製造の事務室の隣で、日本を代表する「故木村秀政教授(Y-11に関しては基本企画のみ)」の後を引き継ぐ航空機設計家たちは、ポーカーをしたり、当時は貴重だった手回し計算機を枕に居眠りしたりしていた姿が思い浮かぶ。
今も続く「アメリカ占領軍」の影が、「三菱・MRJ」の苦戦の姿に重なって、痛々しい。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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