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宅配サービスの切り札となるか!? ラストマイルの配達ロボット、Fedexが開発
Eコマースの拡大につれて、効率的なサプライチェーンの構築は企業にとって喫緊の課題となっている。特に消費者向けの商品では、オンラインショッピングで注文された商品を個人の住宅まで届けるための配送サービスがきわめて重要だ。
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物流業界で世界第2位の米FedEx社は、ラストマイルの宅配サービスを行うロボットを開発したと発表。地域の小売店舗にこのロボットが配置されれば、食品や家庭雑貨の当日配送を実現できるサービスとして期待される。オンラインショッピングの現状と流通サービスの現状を踏まえ、宅配サービスにおける将来技術についてみてみたい。
●Eコマースの成長と物流への影響
インターネットの普及により、実際の店舗へ足を運ばずにものを買うことが当たり前になっている。アマゾンや楽天のサイトを使えば、ほとんどのものはネットで買うことができるし、オンラインで購入したものは数日中に自宅まで配送される。消費者にとって非常に便利なことではあるが、商品を配送するサービスへの負荷が高まっていることは想像に難くない。
日本でもアマゾンの宅配サービスを代行するヤマト運輸が、宅配便のコスト増に頭を悩ませているのは良く知られている。今後もオンラインショッピングは成長を続けると予想されており、特に一般消費者向けの商品を手がける企業にとっては、インフラとしてのサプライチェーンは事業動向を左右する重要な要素となる。
アメリカのピュ―リサーチセンターの調査によれば、アメリカ人の80%がネットで買い物をしており、8人に1人はほぼ毎週何かをネット購入している。18歳から65歳までの消費者を対象としたアンケートでは、実店舗での買い物よりもネットで買う方がよいと答えた人が57%に上ったという。大手小売の米ウォルマートでは、2018年のネット販売は前年から40%以上増加しており、一般消費財へもオンラインショッピングが浸透していることを裏付けている。
個人のネット購買が急増することを受けて、配送会社は地域配送拠点となる倉庫の整備やトラック台数の増加、運転手の人員増などの対応策を進めている。運転手不足や配送効率の悪化を補うためにサプライチェーンの改良を進め、ドライバーの配置計画やGPSによる効率的な運転経路の決定など、IT投資にも余念がない。
●ラストマイルの解決策と宅配ロボット
物流サービスでは、サプライヤーから消費者まで商品を届ける経路を三つに分けている。生産現場から倉庫までをファーストマイル、倉庫から流通センターまでをミドルマイル、そして流通センターから消費者の手元まで届けるのがラストマイルだ。このうち、最も移動距離が長いのがミドルマイルであり、従来のサプライチェーンの設計ではこの部分の効率が重要視されてきた。
しかしEコマースの拡大により、一般消費者のネット購買が増えることで事情が大きく変わってきた。配送センターに届けられたコンテナを一人ひとりの注文に合わせて細かく梱包しなおし、それを個人の住宅に一つ一つ配送するには、サプライチェーンのラストマイルの設計が最も重要だ。国内でも宅配サービスの受取人が不在である場合の処置が問題になっているように、ラストマイルでは配送先が細かく分散されるために効率的な配送計画を立てるのが難しい。
今回、アメリカでFedExが開発した、地域宅配ロボットはこの問題に対する解決策となりうるだろう。FedExではロボット開発に当たってピザハットやウォルグリーン、ウォルマートなどと協力して消費者の購買行動を調査し、これらの小売店舗の販売の60%以上が、店舗から5キロ以内に住んでいる消費者によるものであることを突き止めた。
この宅配ロボットは非常に狭い地域での宅配を手がけるカート型の自動走行ロボットだ。周辺地域の道路情報を内蔵し、歩道を走行して各家庭へ商品を届ける。深層学習機能を内蔵しているため、交通ルールを守って歩行者にぶつからないように道を選びながら、指定された時刻に宅配することもできるだろう。動力は電気なので排気ガスはゼロだ。
この宅配ロボットを地域の小売店舗に何台か配置すれば、消費者はネットで購入した商品を当日配送するサービスを受けることができるだろう。アメリカの市場調査会社ビズフィードによれば、当日配送のサービスがあれば有料でも利用するという消費者は多く、特に高齢者や多忙な共働きの夫婦では需要が高いとみられる。
FedExはこのロボット宅配サービスを、今夏から試験的に導入する予定だ。地域の小売店に設置された宅配ロボットが、住宅地を回って一軒ごとに毎日「ご近所配達サービス」をしてくれる。このロボットにAIが搭載されれば、「AI御用聞き」が誕生する。ラストマイルの問題への解は人とAIの新しい関係を生み出すだろう。(記事:詠一郎・記事一覧を見る)
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