【2019秋冬ミラノコレ ハイライト2】パワフルな女性像が次々に登場

2019年2月23日 16:27

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記事提供元:アパレルウェブ

 2日目は「マックスマーラ(MaxMara)」に始まり、「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」、「フェンディ(FENDI)」、「アンテプリマ(Anteprima)」、「プラダ(PRADA)」、「モスキーノ(MOSCHINO)」等、大御所メゾンたちがショーを開催した。
マックスマーラ(MaxMara)


 「マックスマーラ」の今回のテーマは“THE POLITICS OF GLAMOUR”。コレクションノートには同ブランドのアイコン的存在でもあったモデルのリンダ・エヴァンジェリスタが言った“I like glamour. Not afraid of it.”という言葉が引き合いに出されている。女性が“グラマー(魅力的)”でありたいと言う思いは、どんなシーンでも持っているべき。ゆえに会場をボッコーニ大学というミラノの名門私立大学に移したというのには意味がある。同校を卒業し世界の第一線で活躍する半分は女子生徒。そんなキャリアウーマンたちがどうファッションを楽しむべきか。その答えがこのショーにあるのだ。
 それは、全般的に登場する肩を強調したボクシータイプのジャケットやコート、ワイドスラックス、タートルニット、ロングジレ、ツイードやチェックなどマスキュリンな要素を前面に出しつつ、ニーハイロングブーツや大きくスリットの入ったロングスカート、エキゾチックレザーやアニマル柄などセクシーな要素を差し込んだり、大きなポケットやジップを各所に使うなどディテール使いでワークのイメージも入れ込んでいる。とはいえ、それは単なるテイストミックスではなく、ファッションを杓子定規にしないためのエッセンスだ。
 ビジネスウーマンたちを常に応援してきた「マックスマーラ」。このコレクションはそんなマックスマーラからの“スーツを着なければならないビジネスマンとは違い、女性たちは型に縛られることはない”というパワーウーマンたちへの賛歌であるらしい。
「マックスマーラ」2019秋冬コレクション
エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)


 前回はメンズとの混合ショーをリナーテ空港で行い、ミラノ中の話題をさらった「エンポリオ アルマーニ」だが、今回は以前のペースに戻り、ウイメンズのみのショーを開催。今シーズンのテーマは“FREE STYLE”。ハッピーで自由な雰囲気が漂っている。全体的にオーバーサイズのアウターにフェミニンなドレス、ショート丈のトップにボリューミーなワイドスラックス、ミニドレスにロングコートなどのコントラストを強調。または、透け素材とのレイヤードやミニスカートの下にレギンスを合わせるなどコーディネートにも遊びがなされている。さらに、グラフィカルなプリントやアーガイルチェックモチーフがふんだんに使われていたり、ジョルジオ・アルマーニのポートレート(?)や、グラフィティ風にあしらわれたロゴなど、楽しいディテールが各所に。要素的にはストリートスタイルなのだが、アルマーニが創ると独特のエレガンスが加わる。
 また、夜には「アルマーニ カフェ」のリニューアルオープンイベントが行われた。
「エンポリオ アルマーニ」2019 秋冬コレクション
フェンディ(FENDI)

 1965年以来、ファッション業界史上最も長いコラボレーションと言われる54年間の長い期間、「フェンディ」のクリエイティブ・ディレクターを務めたカール・ラガーフェルド。その訃報が届いたのがミラノコレクションの初日、2月19日。ショー会場の席には、その日付とカール・ラガーフェルドのサインが入った小さなカードが置かれていた。
 「カイザー(皇帝)」と呼ばれたファッション界の重鎮の最後のコレクションは、フェンディの要素を集結したような、ボントンでラグジュアリーな中にモダンさが光るコレクション。お得意のレザーやアートの素材ミックス、コートやドレスからバッグにまで多用した、職人芸が活きるレザーのカッティング、各所に使われているトロンプルイユの遊び、オーガンジーやレースをアイテムの上から重ねることで、アイテムに独特の表情を加えたディテール等。また新しいFFロゴも時にはさりげなく、時には全面的に登場している。
 ショーの最後には、カール・ラガーフェルド本人がフェンディ姉妹とコラボレーションを始めた当時のことを語るショートビデオが流れた。ファッション界全体がここ数日、カール・ラガーフェルドへのR.I.P.に溢れる中、きっと最もそれを悲しんでいるであろう「フェンディ」は、逆に実にさりげなく、そして温かい思い出と共に故人を偲んでいる様子に改めて絆の強さを感じた。
プラダ(PRADA)


 今回もプラダ財団にてショーを行った「プラダ」。メンズのショーと同様、暗い空間に炎がランウェイを導いているかのような、ドラマティックな演出だ。
 メンズコレクションのイメージを継続し、オープニングはトータルブラックのルック、そしてダークで時にホラーな雰囲気。メンズコレでは19世紀のロマンティシズム、そしてその体制に対応できない対立分子としてのフランケンシュタインをイメージし、プリントのモチーフ(ウイメンズでも登場)などにも取り入れていたが、ウイメンズでも“ロマンティック”をミウッチャ・プラダ風に解釈。ホラーこそがロマンティックであり、危険な事こそが魅力的。ロマンティックという概念は自分次第、ということのようだ。
 メンズでも登場したミリタリーの要素はウイメンズにも登場するが、死と隣り合わせの戦争服は究極のロマンティックということなのだろうか。ドンズバの軍服風のジャケットやアビエイターキャップからMA1風スリーブ、金ボタンやミリタリー風ポケットなどのディテールまで揃う。レースとモヘア、ローデンウールとナイロンなど相反する素材を使ったり、フラワーやハートとフランケンシュタインのプリントが混在したり。紳士服に使うような生地で作ったベアトップにリボンモチーフのフェミニンなドレスもあり、またオールブラックやミリタリーテイストのコーディネートにレース、ボウ、フラワーモチーフなどの甘い要素がディテールとして盛り込まれる。
 ロマンティックというものを、決して只の甘美なものだとは解釈しない反逆的な解釈と同時に、ロマンティックな要素こそが過酷な状況に夢を与えてくれるというミウッチャからの深いメッセージがあるようだ。
「プラダ」2019秋冬コレクション
 
モスキーノ(MOSCHINO)


 インビテーションにショーのテーマのヒントが隠されていることが多い「モスキーノ」だが、今回は自分の名前の書いた札が。それはめくって開けるクジのようになっていて、もしかしたらアタリとハズレがあるのかもしれない。
 そういうわけで今回のテーマは“GAME SHOW”。ランウェイの真ん中にはスロットマシン、または高級車、大型家電、家庭用ジムなどの豪華賞品が並び、プレゼンテイター役のモデル達が脇に控えている。クイズに正解するのか、くじに当たるのか、賭けをするのか・・・で、これらの商品が獲得できるかもしれない。そんな平凡な人生において非現実的ではあるけれど、かなうかもしれない夢、というのが今回の裏テーマなのだろう。
 お得意のカラフルプリントのモチーフは、紙幣やスロットマシンなどマネーゲームを象徴するようなモチーフから、洗剤やシリアルなど日用生活品のパッケージデザインまで。それがパワーショルダーシャツにワイドパンツ、ベアトップのミニドレス、ランジェリードレス、ベアトップやワンショルダーのドレスなど様々なアイテムで展開。またアクセサリー類も歯磨きのチューブやアイロンなど日常品モチーフから、賞金の目録のモチーフまで登場した。
「モスキーノ」2019秋冬コレクション
ヘルノ(HERNO)


 今年「ヘルノ」は2012年にアクティブウエアコレクションとして誕生した人気ライン「ラミナー」を強化し、“クチュール・エンジニアリング”をキーワードに、新コレクションを発表。これは1月のメンズコレクションでお披露目された“サルトリア・エンジニアリング”のウイメンズ版。
 コンセプトはメンズと同様に、ウールやブクレなどの素材をメンブレンに張り付けて撥水性を加え、デザインはクチュール感溢れるテイストで仕上げた。機能性は備えながらファッションとして十分楽しめるという、現代の都会のライフスタイルにマッチする。
エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)


 ミラノショールームにてプレゼンテーション形式でコレクションを発表した「エミリオ・プッチ」。今シーズンのインスピレーションは“日本”。デザインチームが昨年日本を訪れて得たアイデアがふんだんに盛り込まれている。特に、日本庭園をイメージした独特のバランス感のあるプリントやキモノスリーブを活かしたデザインが登場。特にプリントでは作庭家の重森美鈴からのインスピレーションの「MIREI」を始め、「HANAMI」、「ALEX」といった新作が登場した。
 後半になると、一発当てた後の姿なのか、ゴールド、ラメ、ファー、ビジューやスパンコール使いなどのゴージャスなドレスに移行する。ウィナー発表の際のようなおめでたいゴールドの紙吹雪の中でフィナーレ。今回もパンチの効いたコレクションにユニーク&ハッピーな演出で、一夜の夢を見させてくれた。
「エミリオ・プッチ」2019秋冬コレクション
サントーニ(SANTONI)
 “BELLEZZA(美)”というテーマで、「サントーニ」の新コレクション。“美とは何か”をテーマに、それぞれの靴からのインスピレーションから、5人の女性アーティストたちがイラストレーション、詩、ビデオインスタレーション、アートインスタレーション、サウンドインスタレーションを制作し、美術館のように新作と共に展示。
 好評のトリプルバックルの新バリエーション、タイムレスクラシックにインスパイアされたカウボーイブーツ、70年代の幾何学的な要素を彷彿させるカラーブロックブーツなど、クラシカルな中にモードな要素をふんだんに盛り込んで、ますます進化したコレクションを発表した。
ザネラート(Zanellato)



 新ショールームにてプレゼンテーションを行った「ザネラート」は、ミニタイプを充実させたコレクションを発表。「ザネラート」のアイコン的バッグであるポスティーナのベイビー版はすでに好評だったが、それよりさらに小さいサイズのスーパーベイビーや、人気上昇ラインのニーナにもベイビー版も登場した。また、ストリートテイスト溢れるグラフィティのシリーズもバリエーション豊富に展開した。
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取材・文:田中美貴

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