BMWi3 新型バッテリーを搭載 WLTCモード360km、レンジ・エクステンダーで466km

2019年2月11日 06:45

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拡大バッテリーを搭載したBMW i3(画像: ビー・エム・ダブリューの発表資料より)

拡大バッテリーを搭載したBMW i3(画像: ビー・エム・ダブリューの発表資料より)[写真拡大]

 BMWジャパンは2月6日、電力量を33kWhから42kWhに拡大したバッテリーを搭載したBMW i3を発売した。航続距離は、WLTCモードで360kmと伸ばしてきた。レンジ・エクステンダーを装備すれば、WLTCモード466kmを実現した。しかし、日産リーフ「e+」はWLTCモード456kmであり、純バッテリーだけで実用的距離を実現しており、はるかにいい。

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■バッテリーで重量増加

 EVが実用化できるのかについては、大きなハードルがある。航続距離を伸ばすために、日産リーフ「e+」で150kgほど車重が増してしまった。一方、新型BMWi3では60kgほどの重量増加だ。リーフの車格で車重が1520kgとなってしまっているのだが、BMWi3で1320kgは重すぎると言ってよいだろう。ガソリン車では、100kg重くなると燃費が1km/1Lマイナスとなる。日産リーフで発電効率が同じとすると、1.5km/1L減となってしまう。「燃費」ならぬ「電費」が悪いのだ。現実の熱効率では、おそらく1km/1Lの差であろう。また、車両重量にガソリンは含まれていないため、ガソリン車に60Lのガソリンを携行するとして約45kgを車両重量にプラスし、EVの車両重量と比較しなければならない。

■実用化の道に立ちふさがる充電時間

 しかし、EVにとって、現在は未だに実用車としては厳しい状況が続いている。それは、まず充電時間だ。日産リーフ「e+」では、80%充電にカラの状態からだと60分かかる。充電スタンドは増えてきているのだが、先客があった場合は実用にはならないだろう。家庭の充電器からであると、12時間程度かかる。通勤に使うにはぎりぎりだ。

 もう一つ、航続距離の短い純粋EVでは、出先で充電スポットに先客があった場合などは、「レンジ・エクステンダー」は誠にありがたい。充電に1台1時間がかかってしまうと、充電スポットが実用にはならない。だから、日産車でもレンジ・エクステンダー装備車が現状では実用的だ。やはり、EV実用化のキーポイントは「充電時間」にあるのかもしれない。

 さらに、もう一つのEVの弱点は、バッテリーの寿命が5年ほどであることだ。これについては、「全固体電池」が量産されるようになると、一気に市場に広がる可能性が出てくる。トヨタとパナソニックの合弁会社が量産体制に入ったことは、大変楽しみだ。EV実用化が始まるかもしれない。

■BMWi3の技術的先進性

 しかし、BMWi3の魅力は、これらで日産リーフと比較できるものでもない。BMWi8オーナーの日常買い物車としての位置づけがある。ロールスロイスオーナーのバンデンプラスプリンセスのような関係だ。これは何とも言えない「存在位置」だが、i3とi8には、胴体丸ごとカーボン製である特徴がある。この技術は、実は日本が先行しており、ボーイング787の胴体の一部を丸ごとカーボンで造り、それを大きな窯で焼き上げる技術がある。BMWi3もi8もこれに似た作り方をしている。これは軽量化の最先端技術で、自動車も、ハイテン、アルミなどの材質から、さらに軽量化が可能なカーボン素材を使うことが増えてくるだろう。

 BMWi3のようなEVは実用化前夜の様相で、各社が先行して生産開始しているが、トヨタも全固体電池の実用化を待って、純粋EVに参戦してくるのは間違いない。発電方法が自然エネルギーに切り替わらない状態では、EVによるCO2削減の意味はないのだが、中国の原子力発電が進み、欧州でトヨタHVに技術的に追いつかない現状では、EVに命運をかけてくるのだろう。

 また、アメリカ・トランプ大統領が「温暖化はない」と言い張っても、中国市場、欧州市場がEVしか許さない規制をかけてくると、PHEVなどの中間的時期があろうとも、世界がEVに走ることは止めようがない。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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