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神戸大、老化の原因となる新たなしくみを解明 キラルアミノ酸の代謝酵素が影響
今回の研究成果から予想されるモデル図(画像: 神戸大学の発表資料より)[写真拡大]
神戸大学バイオシグナル総合研究センターは、アミノ酸代謝酵素の一つであるD-アミノ酸酸化酵素(DAO)が、活性酸素種(ROS)を発生させることによって、細胞の老化を促進させることを解明した。
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アミノ酸は、光学異性体(立体配置し、同じだが対照的な構造を持つ)が存在し、L体とD体に識別されたアミノ酸をキラルアミノ酸と呼ぶ。基本的に生物はL-アミノ酸のみを利用していると考えられてきたが、近年の研究により、生物にもD-アミノ酸が存在していることが判ってきた。
DAOはD-アミノ酸に反応してあらたな物質を生じさせる触媒の働きをする酵素であり、統合失調症発症との関連や、腸における病原性細菌に対する粘膜防御や常在細菌叢の維持など、新たな指摘、研究結果が報告されている物質である。
そこで研究チームは、がん細胞と低濃度の抗がん剤によって、細胞老化を誘導したところ、p53というがん抑制活性を持つ転写因子の発現に依存するようにDAOが発現することを発見した。さらに実験を進め、DAOの発現は様々な刺激で誘導された老化細胞でも確認されたため、DAOが細胞老化制御において重要な役割を果たしていると結論づけた。
続いて、DAOがD-アミノ酸を酸化した時に発生させる活性酸素種(ROS)に注目。ROSの蓄積は細胞の老化だけでなく個体老化への関与も指摘されている物質である。DAOの活性を阻害して実験したみたところ、細胞の老化とROSが抑制されたため、細胞老化制御にDAOが関与していることが明らかになった。
他にもDAOは酵素反応によってROSを発生させ、細胞の老化を促進させることを突き止めた。また、DNAの損傷によって誘導されることも発見した。
最終的には、細胞老化誘導時に発現上昇したSLC52A1という物質によって、細胞内にビタミンB2が取り込まれ、細胞内での活性によってDAOがD-アミノ酸を代謝することでROSを発生させ、細胞の老化を促進させるしくみを解明したのである。
今回の研究により、「ストレス条件下で誘導される細胞の老化に伴って産生されるROSの発生機構」が解明されたことで、研究チームでは、今後、DAOを標的とした薬剤により、細胞老化や個体老化、老化関連疾患の抑制につながる可能性があるとしている。(記事:和田光生・記事一覧を見る)
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