【2019秋冬パリメンズ ハイライト1】デモ騒動後初のファッションウィークが開幕

2019年1月17日 22:39

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記事提供元:アパレルウェブ

 1月15日から、パリでメンズコレクションがスタートしている。エディ・スリマンによる「セリーヌ(CELINE)」のファースト・メンズコレクションや、満を持してパリに再進出した宮下貴裕による「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATHESOLOIST.)」のパリデビューショーなど、話題には事欠かないが、1点だけ気がかりなのが「黄色いベスト運動」。様々なメディアで取り沙汰されている通り、燃料費値上げ反対に端を発したこの運動が、年明けから勢いを増している。デモ行進という名の暴動を避けるために、スケジュールを変更するブランドが相次いでいるのも実状だ。不穏な空気が漂ってはいるが、無事に終了することを祈るばかりである。
フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)


 丸龍文人による「フミト ガンリュウ」は、ヴァンドーム広場に面する18世紀初頭建立の邸宅跡のホールを舞台に最新コレクションを発表した。ブルーを差し色に、黒やキャメルなどベーシックな色調のコレクションは、フォーマルからストリートまで様々なアイテムを揃えるが、オーバーサイズのアイテムが特に目を引いた。
 着物や袴を思わせるディテールやシルエットを取り入れ、流麗な布の動きが優雅で美しい。特にバックサイドにボリュームを持ってくる手法を見せ、フロントとの印象が異なるという意外性のあるアイテムが多く、巧みなカッティングで絶妙なバランス感覚を見せていた。
「フミト ガンリュウ」2019秋冬コレクション
コモン・スウェーデン(CMMN SWDN)


 ロンドンを拠点とするサイフ・バキールとエマ・ヘドルンドによる「コモン・スウェーデン」は、マレ地区のガレージで最新コレクションを発表。ウール・マークが主催するコンクールでファイナリストに選ばれた彼らの今シーズンのニットは、ズタズタにダメージを受けたセーターがメイン。薬品で浸食させて透け感を出したシャツ類も新鮮。しかしそれらは遊びの部分であって、彼らの生み出すテーラードは秀逸。グラフィカルなパッチワークパンツや、大きく広がった肩パッド入りのジャケットは強烈な印象を残した。スウェーデンのモダニズムとロンドンのエキセントリックな側面が融合したコレクションとなっていた。
「コモン・スウェーデン」2019秋冬コレクション
 
ジェイエムウエストン(J.M.WESTON)
 ガリエラ衣装博物館のディレクターで、パフォーマンス・アーティストでもあるオリヴィエ・サイヤールが、「ジェイエムウエストン」のコレクションを手がけ、2区のカフェで自らプレゼンテーションを行った。女優のレティシア・カスタ、シャーロット・ランプリング、クチュリエのクリスチャン・ラクロワ、「DIOR FINE JEWELRY(ディオール・ファイン・ジュエリー)」のアーティスティック・ディレクターであるヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌなど蒼々たる招待客が見守る中、ヘッドマイクを装着したサイヤールが最新作のモカシン17点を一点一点披露。
 アーティストやクチュリエの名前を出しつつ、詩的な言葉で、時にエロティックな文言も交えてユーモラスに説明し、会場は大いに湧き、拍手喝采となった。
ファセッタズム(FACETASM)


 落合宏理による「ファセッタズム」は、ポンピドーセンターに程近いサン・メリー教会で最新コレクションを発表した。コレクションタイトルは“I’VE PUT チチンプイプイ ON YOU”。魔法の言葉を引用しながら、ナイーヴなテイストを今までのストリートスタイルとミックスし、凝ったディテールを加えることで重厚感あるコレクションに仕上げている。鮮やかな色遣いも印象的。テーラードも含めて、バリエーション豊かなアイテムが揃うが、1つのまとまった強い世界観を創出していた。
「ファセッタズム」2019秋冬コレクション
アクネ ストゥディオズ(Acne Studios)


 北マレ地区の旧市場、カロー・ドゥ・トンプルでショーを開催したのが、ジョニー・ヨハンセンによる「アクネ ストゥディオズ」。ゴートヘアのパンツとニットプル、そしてモヘアの長いマフラーを合わせたルックは、どこと無く垢抜けない印象を残しつつ、同時にモダニティと新鮮さを感じさせるから不思議だ。
 ポケット部分がめくれてインナーが見えてしまっているかのようなパンツや、長いフリンジのポンチョ風ニット、毛糸が浮き立っているかのようなチュールがけのプルオーバーなど、アクネらしい「今まで見たことの無いアイテム」もしっかり揃っている。不思議だけれど、抵抗し難い魅力を兼ね備えたコレクションとなった。
 各ブランドは、それぞれの世界観や作風を堅持しながらも、ディテールやカッティングに変化を加え、様々な創意工夫を見せている。そして優しいシルエットに仕立てたり、鮮やかな色を取り入れ、楽しさや遊びの側面も強調。それは、コレクション全体に明るい光を感じさせる要素ともなっている。
「アクネ ストゥディオズ」2019秋冬コレクション
取材・文 :清水友顕
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