アルマ望遠鏡、銀河と星形成の謎に迫る研究 74個のフェイスオン銀河を観測

2019年1月16日 21:23

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PHANGS-ALMA計画で撮影された6つの渦巻銀河。星の材料となるガスが放つ電波をとらえており、渦巻状に広がるガス雲のようすが詳細に描き出されている。(C)ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); NRAO/AUI/NSF, B. Saxton

PHANGS-ALMA計画で撮影された6つの渦巻銀河。星の材料となるガスが放つ電波をとらえており、渦巻状に広がるガス雲のようすが詳細に描き出されている。(C)ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); NRAO/AUI/NSF, B. Saxton[写真拡大]

 宇宙にはたくさんの銀河があり、大きさも形もさまざまで、また、その銀河の中で作られる星々も活動期間や星の作られ方はさまざまだ。銀河には大きく分けて、円盤銀河と楕円銀河がある。そのうちの円盤銀河には、アンドロメダ銀河のように中心まで螺旋を描く渦巻銀河や、天の川銀河のように明るい中心部分が、棒状に伸びた構造を持つ棒渦巻銀河などがある。

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 南米チリ、標高5000メートルのアタカマ砂漠にあるアルマ望遠鏡を使用した研究プロジェクト、PHANGS-ALMA (Physics at High Angular Resolution in Nearby galaxieS:近傍銀河の高解像度観測による物理学研究)は、多数の銀河を観測し、星々を形成する「星の工場」となるガス雲の詳細な観測を行うことが出来たと報告している。

 対象となったのは、南半球から観測することのできる渦巻銀河のうち、「フェイスオン銀河」に分類される銀河だ。この分類に属する銀河は、地球から見た時に渦巻きが正面から観測出来る。今回の研究では、合計750時間をかけて、74個の銀河の観測を行い、これまでにないほど詳細なデータを取得。その中には、3万個の「星の工場」になるガス雲のデータも得ることが出来た。研究チームは、膨大かつ貴重なデータをもとに銀河の大きさや年齢、内部のガスの運動によって星形成のサイクルがどのように変化するのかなどに迫ろうとしている。

 星の形成は、冷たく密度の高い分子ガス雲の中で起こる。銀河の円盤部分にはたくさんの分子ガス雲があり、密度が高い場所が出来るとそこは重力が強くなり、周囲のガスを集め更に収縮していく。この時、持っている角運動量(回転運動の大きさを表わす量)を捨てないと収縮が出来ないため、ガスのジェットとして放出する。

 「PHANGSのこれまでの観測によって、生まれたばかりの星たちが周囲のガス雲をすぐに壊してしまうことが確かめられた(ガスのジェット)。研究チームでは、異なるタイプの銀河でガス雲破壊のプロセスがどのように進むのかを調べている。これが、星形成効率にとって大きな影響を与えるかもしれない」と、チームのリーダーの一人で、カナダ・アルバータ大学の天文学者であるエリック・ロゾロウスキー氏は述べている。

 同じくチリのアタカマ砂漠に設置されている、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTは、8.2メートルの望遠鏡4台で構成されており、望遠鏡の1つには、MUSEと呼ばれる分光器がある。研究チームはアルマ望遠鏡以外に、このMUSEを使った「PHANGS-MUSE計画」や、ハッブル宇宙望遠鏡を使った「PHANGS-HST計画」も進行中だという。

 多角的な方面から銀河を観測することで、星形成に必要な低温ガスの分布とその動きや、高温ガスと星の分布などのデータを網羅的に補い、銀河の中での星の作られ方の違いとその原因の全ての要素を広く理解しようとしている。

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